Wasatch100_2021 Not finish yet

2019年9月に初挑戦をしたユタ州ワサッチ山脈にて行われる山岳100マイルトレイルランニングレース ワサッチフロント100へ、 2021年9月10日に2度目のチャレンジをしてきました。 そのレースへの行程と結果、 心情を細かく書いていきたいと思います。

ネペンテスインプリントIssue15では僕の趣味としてのトレイルランニングを紹介していただいております。もしチャンスがあればそちらも読んでいただけたら幸いです。 ネペンテス店舗もしくは蔦屋各店舗、 青山ブックセンターなどの本屋でも扱っているようです。

それでは少し長くなりますがお付き合いください。

準備:

2019年大会では70マイル地点で制限時間に間に合わず、 DNFをしました。 レース序盤で怪我をしていたので、 今思えば最善の判断だったと自分には言い聞かせていますが、 内心はすごく悔しかったです。 その気持ちを晴らすため、 2020年大会にも申し込みましたが、 コロナ禍でレース自体が中止。 感染による世の中の環境が厳しい中、 ギリギリまでトレーニングは続けていましたが大会キャンセルが決まり、 その後はだいぶ気が抜けてしまって、 2020年年末、 21年初春ぐらいまではトレーニングを詰め込まなかった気がします。

2021年春がやってきて、 マフェトン理論に基づいたトレーニングをベースに負荷をつけたり、 時間をできる限り増やしたり、 自宅周辺にある数少ない傾斜のついた道、階段や丘、 坂の登り降りをリピートしまくる事で、 登りに対する抵抗をつけるようにトレーニングを行いました。 僕の住む東海岸には、 ユタにあるような高所高山がなく、 高度順応するのが最大の難点でした。 街にも低酸素室などはなく本当に困りました。

エンデュランスアスリートトレイナーで有名なJason Koopさんのポッドキャストにて高度順応について話していました。 それによると、 10日以上前に現地入りして順応させるか、 現地に直前に入って体が高所に気づく前に走り出すかの二択と言っていたので、 僕は色々な状況から後者を選びました。

この方法が通用するかは謎でしたが、、。

ワサッチ100は8時間のボランティアトレイルワークが出場条件に求められます。 今年はコロナ禍でこれは免除されていましたが、 僕は毎日のように走っていたブルックリン、 プロスペクトパークの清掃や整備、 ペンキ塗りなどをしてボランティアワークを行いました。

今回は補給用のジェルをなるべく天然素材のものにしたのと、 カロリーが入ったエナジードリンクを常時使用しました。 どちらも味も良く体にとり入れやすかったです。 ジェル特有の極度な甘ったるさはあまりないですので、 おすすめです。 後半、 胃がムカムカしてきた中でもカロリー入りのエナジードリンクは普通に飲めました。 ぜひ試してみてください。

Wasatch 100コース全容

Wasatch100_2021 Not finish yet

レース前日、当日:

毎年、 大会前日にゼッケンの引き渡しとドロップバックを預けることと、 レースの説明会があるのですが、 人が密集するのを避けるため、 今回は説明会はビデオにてレースディレクターが事前に説明するという方式でした。

大会当日は朝4時にソルトレイクシティーのダウンタウンに大型バス2台がランナーをピックアップしてくれます。 そのバスに乗り約30分かけてスタート地点まで移動します。

バスを降ろされ、 坂を5分ほど登ると、 簡易トイレと大勢のランナーで溢れているスタート地点に到着します。 長蛇の列のトイレに並んでいると間に合わないので、 皆真っ暗な山に消えて用事を済ませているようでした。

Wasatch100_2021 Not finish yet

5:00am~ レーススタート
From East Mountain Wilderness Park

今回、 実際にお会いするのは初めてでしたが、 日本から来られた、 渡辺(なみねむ) さん、 田中(JR) さん、 田中(啓介) さんの4人でSLC滞在中は過ごしました。 一緒にご飯食べたりアドバイスいただいたりとても有意義な時間でした。 みなさん、こんな状況の中、 はるばるアメリカまでいらっしゃいました。 最高なレースを一緒に体験できたこと感謝しております。 最後に笑って再会できるように挨拶を交わし、 スタートラインへ。

久々のロングレース、 2年前の失敗、 色々頭をよぎりましたが、 レースは始まった。

スタート地点が標高1400M。 初め3マイルほどは、 緩やかな丘を走らされる。 実は前回このパートで足首を折るかというほどひどい捻挫をしでかした。 今回は絶対しないぞと心に誓って安全走行を心がけた。 無事にそのパートをすぎ、 一気に高度2800Mまで上る初めの上りにはいる。 前回は捻った足首を庇い、 なおかつ足の筋肉が攣り全く進めない状態が続いた。 今回は心拍を上げないようにじっくり進んでいくことを心がけたが、 やはり傾斜が急になればなるほど息が繋がらなくなり、 しまいには足に力がはいらなくなったり、 手先が痺れ始めてきたし頭痛もする。 これらは高山病の症状。ひどくならないように、 長く息を吐くことに集中、 散々後続のランナーに追い越されながらようやく最後のピークに上がってきた、 予想していた時間より少し遅いぐらいで、 この山のピークに到着。 最後の方、実は目の前が何度か真っ白になったりしていた、、 今回はできなかったがやはり高度順応は必要だと思う。

ここからは綺麗な眺めの長くゆるい下りを進み、 Grobben’s Shed WS(11.94mile 水だけの補給スポット) につく、 足早に水だけ補給して次のエイドに向かって走り出す。 まだ体が目覚めていないのと、 初めの上りで上がった心拍が乱れているのとで、 あんまりうまく走れなかったが、 一つ山を越え、 下り、 最後グッと登り切った場所にBountiful B AS(17miles) がある。 初めのドロップバックポイントなので、 補給だけすまし先へ急いだ。

次のエイド、Session Liftoff AS(21.3mile) までの道のりは細かい上り下りを繰り返しながらも標高は常時2500M以上をキープしていた気がする。 このレースは基本的に終始2500メートル付近から下になかなか下げさせてもらえない。

標高が高いせいかあんまり足にも力が入らない。 頭がふわふわしている感じがする。 前回は雨でこの区間がドロドロで全身赤土だらけになったのを覚えている。 今回はそのようなことはなく、 1年以上あまり使われていなくて整備されていないトレイルを進んでいった。 Session Liftoff AS(21.3mile) には難なくつく、ここまでは予定時間通りだ。

次のエイドBig Mountain Pass AS(31.9mile) まではレース中一番長い区間で約11マイル、 山の稜線を走るため全く太陽を遮るものがなく体感で35度以上くらいの温度を感じるエリアになる。 そのためこのエイドで空にしていたフラスクにも氷水を入れてもらい、 全部で3つの水筒と首に巻いている手ぬぐいいっぱいに氷を詰めた、 この氷手ぬぐいで目が覚めた。 エイドから出てすぐ1000Mほど登らされる際に、 雷雲が近づいてきているのと同時に雹が降り出した。 少し足を止めたが勢いが緩んだ隙に走り始めた、 足はまだまだ動きそう。 止まっている暇などない。

何度も何度もフェイクピークを上る、 その度に錯覚に陥る。 さっきも同じような場所に来た気がする。 迷わず一直線の稜線のはずなのに、、。 Big Mountain Pass AS(31.9mile) がようやく見えた! そこから何度も何度も山道を迂回させられ、 ようやく最後の下りに差し掛かる。 飲水は3本目を持っていなかったら危なかった。 前回の経験が効いている。 まだ余力を残してエイドに到着。 一気に着替えや補給を済ませ、 エイドを立つ。 まだタイムテーブル通りな気がしていた。 33時間ゴールくらいの。

Alexander Ridge AS(40.13mile) への道のりは同じような山道が延々と続くが、 前回と比べるとここもトレイルの状態が良くなかった気がする。 この1年くらいあんまり人が使っていなかったのではと思います。 暑さもピークになりこの区間が一番暑さが厳しかった気がします。 西陽が体にヒリヒリと染み込んでくる感じ。 山火事で以前と違う位置になったエイドステーションは前回のようなアットホーム感がなく、 用事を済ましたら先に足を進めました。 なんだか食欲はないが、 ジェルと栄養ドリンクは普通にとれていたのであんまり気にせず進みました。 高山病からか頭痛が止まなかったので、 頭痛薬を飲む。

ここからロード、 林道を繋ぎ、 永遠と続く一本道を上ったり下ったり、 雨、 風、 雷が起こり、 レインジャケットを引っ張り出した。 太陽が沈みだし朝つけていたヘッドライトを取り出した。(予定では次のエイドまではヘッドライトはいらないつもりでしたが、予定時間を超え始めていた) 次のエイド、 Lamb’s Underpass AS(45.71mile) まではなんだか迷路みたいな道を走らされる、 ぐるぐる無駄に回り道、 向こうに見えるエイドステーションまで着く頃にはあたりは真っ暗になっていた。 前回はこのエイドでハンバーガーなどを待っていたら30分以上時間がかかったので、 それはせず、 出し汁みたいなものをもらい、 ドロップバックに入っていたものを取り出し、 補給しジェルを一本飲み、 屈伸してから足を前に進めた。それでも後で時間を見たら20分以上時間を使っていた、 改善の余地あり。

真っ暗なロードを3マイルほど登り、 トレイルにはいる。 陽が出ている時間だったら綺麗なトレイルなんだろうなあと思いながら足を進める。 雨が混じるトレイルを3マイルほど登り、 50マイル地点で一つの山のピークを迎える。 そこから一度グッと下り、 4マイルほど山を登り返したところにUpper Big Water AS(54.18mile) がある。 予定時間より遅れて着くがまだ想定内であった。 少し胃がムカムカしてきていたので、 不安が出てきたが、 補給を済まし、 体が硬くなる前に進み始めた。

ここからこのレースに二つある標高3000m強のピークの一つ目をこえる。 夜中だったのと、 Desolation Lake(61.3mile) までの地味な上りの間、 レース前半で使った大腿四頭筋が弱っているのがわかった。 疲労もあるが息が上がるのが早かったのはやはり標高3000Mを超えていたせいもある。 ここからScott’s Peak AS(65.3mile) まで、 約4マイルの登り下りを繰り返す、 温度も少し下がってきてはいたが、 それはさほど気にならなかった。

幻覚と幻聴が始まったのはこの頃からかな。 なんでも人の顔に見え始め、 いるわけがないうちの犬の声が聞こえ始めた。 周りに誰もいないので怖いかって言われればそんな気もするがあんまり気にならず進めた。 足元にサラマンダーが何匹もいて、 幻覚かって思いポールで突っついたら動いた。 本物のサラマンダーだった!! 予定時間を大幅に過ぎていたので先を急ぐが、 スピードがあんまり出ていなかった気がする。 余力はまだあったので、 ここでプッシュするべきだった気がする。 ここから山を降って山の中腹にあるBrighton Lodge AS(69.3mile) まで約500Mほど降る。

このエイドBrighton Lodge AS(69.3mile) が一番寒い。 そして、 僕にとって鬼門である。

暖かい誘惑が多いのはもちろん、 最後の3000M強の山を超える前、 時間のコントロールをとても有する重要なエイド区間である。 少しゆっくりしていたのがまずダメだった。 ここはすぐに出るべきエイドである。

前回はこのエイドで時間をとってしまい筋肉が固くなり、 序盤の怪我もあったせいで70マイル付近で足が止まり山の途中でDNFとなった。

まあ言い訳は色々あるが、 このエイドでDNFしようとしていたランナーの方をレースオーガナイザーの方々に一緒に連れて行ってくれと頼まれた。 僕はこの時点で他人を連れて行けるほど余力がなかったし、 少しでも休むと筋肉が強張ってしまうのでできれば動き続けたかった。

でもなんだか断れなかった。 それがトレイルランニングな気がするし、 自分である気がすると思ったから。 彼と一緒に先を目指して進んでいく、 それはそれでよかった気がしたが、 やはり時間の計算があっていなかった。

今思うと、 それは自分にはできないと断るべきだったのか? それともどうすればよかったのか?

自分の答えは 『これも100マイルレースなんだと思う。』

彼は僕なんかより経験値も100マイル完走も何度もされている方だった。 ワサッチとは相性が悪いようで今回が3度目で今まで参加した中で、 今回が最長に進んでいたレースだとおっしゃっていた。 素敵な出会いではあったが、 僕の2度目の挑戦はここで終わっていた。 彼のせいにしたりはしないが、 そこで冷静に状況判断できなかった自分の落ち度である。

前回は登れなかった2つ目の3200M強の山を超え、 先のAnts Knolls AS(74.1mile) に到着、 この時点で先は難しいなあと思ったが、 係の方に止められなかったのでその先のエイドに向かって進んだ。

一緒に進んだ彼も体が右に傾き普通に歩くことさえできていないにもかかわらず、 前に前に進んでいた。 とてもかっこよかった。 太陽が上がり始めた頃から身体が動き始めているのがわかっていたので走ることもできたが、 もう自分の中でのレースはやめにしていた気がする。

Pole line pass AS(77.2mile) を目指し進んだ、 もしかしたら10時の関門に間に合うかもと少し期待はあったがやはり間に合わず、 最後はその彼と一緒にPole line pass ASに到着し、 2度目のワサッチ100を終えた。

僕はまた完走できなかった。

タイムテーブルから少しずつ時間がずれていき、 67マイル時点ではゴールできるかできないかの瀬戸際にいたはずだ。 その状況を冷静に判断できていなかった自分がいた。 そこが今回の大きなミスだと思っている。

100マイルレースは経験値で補えることが多くある気がする。 僕は前回より2つ先のエイドには進めた。筋肉痛は醜かったですが、 前回みたいな怪我もなく、 そのほかの機能も動いていた。 あとはちょっとしたプランとメンタルでカバーできた気がする。

『僕は全部出しきれたのかなあ?』

また挑戦します。 次回になんとしても出場して完走バックルを手に入れたい。 まずは年始の2022年度抽選で当たることから!!!

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AKIRA YAMADA 山田 陽

AKIRA YAMADA 山田 陽

フォトグラファー。 1998年よりNYをベースに活動。 近年は東京との往き来も多くなり、 雑誌、 カタログ、 広告の撮影に携わる。 次回の展示の製作開始。
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