コーヒー豆:

ここ数年、時間を見つけるとコーヒー豆を買いに通っていた、お気に入りのコーヒー豆のインポーター&ロースターが近所にありました。

主な豆はアフリカの提携したフェアートレイドの畑から輸入したものを提供していました。
丁寧に豆も選ばれ、焙煎も自分の好みのものでしたので、自宅用によく買いに行っていました。

今年は夏から秋にかけて移動が多かったので、そこへ豆を買いに行くのも、しばらくとおのいていましたが、グロセリーショッピングのついでに久しぶりに足を伸ばしてみました。

数ヶ月ぶりのお店の中身は今までとはガラッと変わり、以前までの焙煎所にコーヒースタンドが付いたようなスタイルからいまどきのコーヒー屋さんに様変わりしていました。看板を見直したくらいです。なんだか変だなと思いながらもいつも買っていたコーヒー豆を探し始めると、どこにも見当たらず、別の焙煎所が焙煎したコーヒー豆が陳列されていました。並んでいる豆を一つ一つ確かめてみると、右上にステッカーが貼ってあることに気づきました。要するに、豆のインポートは彼らが今まで通りおこない、豆を焙煎所に売り、それらの焙煎所で焙煎したコーヒー豆を並べているということです。

彼らはビジネスを豆のインポートのみに切り替え、そこでは別のコーヒーロースターの豆を売り、主にはコーヒーをいれて売るというカフェスタイルに変更したようです。

内心なんだか寂しなあと思いながらも、コーヒー豆の焙煎日を調べてみようと手に取ると、焙煎日などは表記されていなくて、表記されていたのは、:豆は2015年の5月までに使ってください:という表記が、、それって半年後?数か月前に訪れた際に彼らが提供していた豆は、焙煎日から1週間もたたないものでしたし、10日間くらいで使い切ってくださいと言い切っていたはずだったのが、ここまで違うことを言っている豆を置いていることに、なんだか疑問がわき、店員に質問してみることにしました。

どうして焙煎日を書かなくなったのか? 
どうやったらこの豆の賞味期限が6ヶ月に伸びたのか?

彼から返ってきた答えは、『基本的な豆のクオリティーは以前と同じなはずだし、実際、自分はそこまでわからない』という単純でいい加減な答えが戻ってきました。そんな答えに煮え切らない僕は、もう少し質問したいと思い、話しかけようとした時に彼から極めつけな一撃をくらいました。『豆を売っても僕には大してお金が入ってこないし、ほら、あなたの後ろに人が並んでいるでしょ、僕は彼らにコーヒーを入れてチップを稼がないといけないんだよ。』もちろん、彼の言い分はわかりますが、コーヒー豆をうりにしていたお店だったにもかかわらず、その言いわけはないと思いました。以前からいた従業員やオーナー的な人は、休日だったので見当たらず、彼らがいればよかったのになあとがっかりです。

しかし、コーヒーしか提供しないお店で、このくらいのシンプルな質問をしても、しっかりした答えをもらえないなんてと意気消沈。完全に呆れてしまい、手に持っていたコーヒー豆を置いてそのまま帰ってきてしまいました。そこへはもう二度と行かないと思います。

アメリカのコーヒーの味はこの10年でとっても美味しくなったと思います。
それに準じて値段もぐっと上がってきています。昔はお店に並んでいる豆は、結構古いものや、どの地域の豆、焙煎日など提示していないものがほとんどでしたが、値段が低かったということもあるので、その点で納得して買えていたはずです。しかしながら、オーガニック豆、地域指定の豆、焙煎日の記載、焙煎の方法、品質の管理などの向上でここまで値段が上昇してきたことは理解できますが、ここにきてクオリティーのコントロールが乱れ始めているのでしょうか? そして、今まで通りと思いこみ、確かめずに豆を買い続けていると、、実は、5ヶ月前の豆だったなんてことがまた10年前のように始まってしまうのでしょうか?しかも値段はぐっと値上がった現在のままで。

寒い休日の朝のちょっとした出来事でしたが、なんだか色々と考えさせられました。
きっと少ない量で、良い品質のものだけを売っていたのでは、利益が上がらないのはわかります。でもそのように方針やお店の方向性を変えたのであれば、すくなくとも今まで来ていたお客さんが聞いてきたら、そこで働いている全員がちゃんと説明できるようにしていてほしかったなあと思いました。こんなことって日常的にいろいろな場面でありそうですね。

2014年も、コラムを続けることができました。
また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

AKIRA YAMADA 山田 陽

AKIRA YAMADA 山田 陽

フォトグラファー。 1998年よりNYをベースに活動。 近年は東京との往き来も多くなり、 雑誌、 カタログ、 広告の撮影に携わる。 次回の展示の製作開始。
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