The Story Behind

お店にはストーリーが付きものだ。
イタリアは、ボローニャにあるお店、Pの話は何度聞いても面白い。
オーナー夫妻はアメリカ人で、60年代の本格派ヒッピー。
ヨーロッパ各地、そしてアフリカを歩き廻って最後に落ち着いたのがボローニャ。そこで始めたのがサープラス屋、それが何度かの引っ越しの後に今の店の形態に。お店のスタイルが見える、僕が個人的に大好きなタイプで、何しろ名物のオーナーが頑固で一癖も二癖もあって面白かった。 今は初代オーナーから次の世代に移る過渡期で、次世代たちの頑張りどころだ。期待しています。

そんなことを考えていたら思い出したのは、丁度27年ほど前に手に入れた一枚のシャツ。
多分80年代の半ばにインポートの洋服屋にいた人は知ってる人も多いと思う。
レーベルには、”Clacton & Frinton” と書いてある。
ロゴの下には、English Cut と続く。どうみても最初はイギリスのメーカーだと思った。
当時働いていたお店に出入りするインポートの洋服卸業者が持ってきて、一目で気に入り、お店への仕入れとは別に個人オーダーして手に入れたもの。英国風なエンドオンエンドのライトブルー生地で、襟も日本でいうレギュラーカラー、ストレートでスプレッドが狭い小さめの形。前立ては無いが、見返しが深く取ってあり、この辺はいわゆる英国風のドレスシャツの雰囲気なのだけど、襟の後部はピークになっており、ヨークには縦置きでループ、そしてインボックスプリーツが背中に入る。ストレートな襟も、裏側にカラーステイ用のポケットはあるのに、ステイは無し。こうやって書いても、一体何の事だろうと思うでしょうが、この当時にこのディテールというのは、非常に渋かった。デザインというデザインではなく、昔からある英国伝統のディテールをアレンジしたかなり微妙なさじ加減、そしてボディはその頃のトレンドというか、結構ビッグサイズなもの。ここが面白い。80年代のビッグボディに、伝統的なディテールの大盛り。基本的な縫製も、全て本縫いで、それがまたシャツの本気度が見える。かなりハマって、よーく着ていた。それが、ロスアンゼルスの店のオリジナルだと知ったのはさらに5年くらい後。88年あたり、仕事を兼ねてアメリカによく来ていた頃、LAで紹介された地元のバイヤーを長くされていたO氏が元々このシャツを日本に持って行った張本人だったから。Clacton のお店は当時、ウェストハリウッドにあり、芸能人の顧客も多い知る人ぞ知る洋服屋さんだった。イギリス人の夫婦が70年代に世界中を旅して、75年に一度はニュージーランドのオークランドに落ち着き、お店を始めたのが Frinton そしてその後またアフリカ経由の旅の果て、LAに移住して始めたのが何故か Clacton & Frinton 。ここのオリジナルシャツが評判で、それを日本に持ってきたのが前述のO氏。あれからまた20年以上の歳月が経ったけれど、O氏は日本に戻ったものの相変わらずパワフルに今はとあるメジャーブランドを指揮している。あの Clacton & Frinton はどうなったのろうか、と検索してみると、、、。
http://www.takapuna.com/history.php 

シャツ一枚で、こんなに思い出すのも歳を取った証拠。今まで印象に残ってきたシャツには、まだまだいろんな思い出がある。

Scott Crolla
ワールドがしぶとくやっていたので、名前は聞いた事がある人も多いと思うけど、ここの真骨頂は80年代初めに大ブレークした刺繍が全面にされたシャツ。ゴブラン織りのシャツ。そしてイカットパターンというか、絣柄のドレスシャツ。値段はもう、恐ろしく高かった。今じゃあ3、4万円くらいのシャツは結構見かけるけど、30年くらい前ではとんでもない値段。業界ではもの凄い話題になり、僕も欲しかった。欲しかったけれど、残念ながら手にいれられなかったほど高かった。

Bone and Franks
これは名前の音でしか覚えてなくてスペルを忘れてしまった。もしかしたら Beau & Franks か、Borne だったかも。ここのシャツはウール地のクラシックスタイル、つまりペンドルトン型なのだけど、もの凄い迫力のハンティング柄のプリント。どこから見ても目立つカッコイイシャツでした。

店にもストーリーはあるけど、やっぱアイテムにもいっぱいストーリーがある。
なんか僕はこういうモノや店にまつわるストーリーが大好きなようです。僕らの作るEGの洋服や、それを扱うお店も、お客さんの思い出に残るストーリーを作れていれば最高なんですが。

ではまた次回。

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DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

NEPENTHES AMERICA INC.代表「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。08年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。