LO – LIFE

去年の夏、いつもお世話になっているM女史と食事してる際に話になったのが、”Lo-Life” の事。
ご存知の方も多いと思うが、僕は全く知らなかった。Lo-Life というのは、Polo Ralph Lauren Life Style から来てるようだ。80年代の後半、ブルックリンの悪ガキたちが某デパートを中心に集団でかっぱらいを始め、その戦利品を売って金を作っていた。最も売れたのが、ポロ・ラルフローレンの商品。彼らは自らをU.S.A. と名乗るが、その意味は United Shoplifters Association の略。結構笑ってしまうが、彼らは売るだけでなく、いつの間にか自分たち自身が、全身ラルフローレンで着飾るようになっていく。これが、いわゆる Lo-down (全身ポロ)の始まりで、周りの友人たちを巻き込みながら熱狂的なムーブメントになったのが、Lo-Life 。M女史からの情報を聞いて、いろいろと調べてみると、これが本当に面白いというか、興味深かった。興味のある人は、以下のリンクをチェックしてみて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=KiWNZzMCWbs

https://www.highsnobiety.com/2015/09/21/polo-ralph-lauren-streetwear/

90年代に入って、よく見かけたヒップホップや、ラッパーの人たちがこぞって着ていたトミーフィルフィガーや、ノーティカなんかも、そこにルーツがあったのだと今になってわかった。ついでにみつけたのが、この本。”Lo – Life   An American Classic” 著者の Rack-Lo さんは当事者の一人で、Lo-Life の成り立ちから、最終的に彼自身が立ち上げてしまったブランド Lo-Life まで、どういう過程でそのうねりが進化してきたかを綴っている。今では彼らの中で昔人気のあったポロ・ラルフローレンの商品はヴィンテージデニムのそれみたいに、信じられないようなプレミア価格で取引されている。熱狂的なファンたちは、いわゆるレア物をメインにした展示即売会、交換会を催しながらどんどん大きな流れになってきた。 年に何回かは、ベストドレッサーイベントまであるというから凄い。うちにバイトに来ているB君は、聞いてみるとスジガネ入りの Lo-Life フリーク。その筋では、かなり価値のある、オリジナル版、Snow Beach シリーズや、ベアーセーターなんかもたくさん所有しているそうで、フリーマーケットを中心にいつも探しているらしい。こうなるとまるでヴィンテージジーンズ探しと大差ないほどの熱を感じてしまう。昨年、経営陣がバタバタだったラルフローレン社は、2度にわたって大規模なリストラを敢行し、開けたばかりだった5番街のフラッグシップストアを閉めてしまった。何年か前までは株式上場して絶好調だったはずだったけど、ラルフローレン自身の引退も影響したのか、どうもうまく行ってなさそうだった。それが、Lo-Life の盛り上がりで、彼らに人気のシリーズの復刻版を発売し始め、それが数時間で売り切れの大盛況で、ラルフ人気の復活さえ聞こえてきたからびっくりだ。

ラルフローレンは、元々アメリカの上流階級社会のイメージだったと思う。その打ち出し方や、広告も非常に凝っていて上手かった。にも関わらず、一方では彼の目指す方向とは全く関係なく、Lo-Life のような勢力が生まれてきた。デザイナーの意向を無視した価値観で彼ら独自の勝手なスタイルが築きあげられ、それが何故か最終的には本流とリンクしていくこの関係性は、本当に面白い。別件で、先日話になった Dapper Dan of Harlem と Gucci の関係にも似てるかも知れない。これも非常に興味深いので是非ググってほしい。そして時間があれば、ドキュメンタリー映画「 Fresh Dressed 」を是非チェックしてほしい。

これは2015年のドキュメンタリーで、僕は何年か前に飛行機内で観た。ファッションと音楽、そしてストリートの強烈な結びつきがわかる。有名ミュージシャンや、80年代に全盛を誇ったいくつかのブランド、デザイナーも出演している。

長年洋服業界にいて今思うのは、僕自身は本当にいわゆる日本特有のメンズファッションの王道というか、優等生路線を単純に何も疑わずに歩いてきたんだなという事。最初にVANありきで、メンクラ、ポパイ、そしてDC、またラフルローレンから、NYデザイナーファッションと、まるで絵に描いたような路線だ。 ずっとそれが基本で、正当な路線だと信じていたところがあったと思う。だけど途中からアメリカに移住してきて、NYとシンクロしてるうちに、僕の見て来た世界と全然違う別の世界がいくつも存在していて、僕の培ってきた知識や、経験なんかは全く通らない、必要のない、強烈なスタイル、カッコ良さがあることをこのNYで知った。もちろん東京や、ロンドン、パリでも同様にそれぞれの場所で、それぞれのユースカルチャーと密接に繋がるストリートスタイルが生まれているだろうし、それにも当然興味はあるけれど、やっぱりここNYのパワーは半端なく凄いと思ってしまう。今じゃあ、ただのおっさんの僕が、見た目の老化とは別に、心踊るほどに惹きつけられてやまないのは、ここなんだなあと改めて想う。

ではまた次回。

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DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

NEPENTHES AMERICA INC.代表「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。08年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。