Roll away the dew
Western State Endurance Run 2022 (前編)

column 0818

心が少し落ち着いたので、 ようやく書き始めれます。

2021年11月に走った Rio Del Lago 100マイルトレイルレース (RDL) が抽選資格となり、 ”世界で最も古く最も権威のある100マイルトレイルレースといわれる” Western State Endurance Run (WS) へ応募したのは11月にNYへ戻ってすぐでした。 

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21年12月4日に開催地であるカリフォルニア州オーバーンにて、 出場権をかけた恒例の抽選会が行われました。 2022年の応募人数は6208名。 WSの抽選システムは申し込みをして、 当たらずに年数を重ねていくと自分の抽選券が増えていくシステムになっている。 初めの年が1枚、 2年目が2枚、 3年目が4枚と毎年2倍ずつに増えていく、 9年間外れて応募すると、 256枚の自分のチケットが抽選箱の中に入ることになる。 もちろん応募資格を得るためには、 選ばれたレースも完走しなくてはいけません。 今年のチケット総数が29724枚。 その中から参加資格を得れるのが369名、 それに加え75名のWaitlist (参加資格者が何らかの事情で走らない、 もしくは走れない場合に辞退した資格が回ってくる) が抽選されました。

そんなすごい倍率の中、 僕はすぐに選ばれたというわけではなく、 Waitlist 22番目に当選。 ベテランランナーの皆さんからの教えで、 例年、 Waitlist30番目くらいまでは順番が回ってくる統計が出ているそうで、 少し半信半疑の中、 その日から僕のWestern State Endurance Runへの道が始まりました。

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出場するからには目標は24時間以内のゴール、 そしてスターリングシルバーでできた ”シルバーバックル” (アメリカの100マイルレースをゴールするとベルトバックルをもらえるレースが多い) を手に入れたい。 21年11月のレースでの疲労がやや残る中、 12月後半からトレーニングが徐々に始まっていきました。

僕が完走を狙っていた今年の9月に開催されるワサッチフロント100とは全く違ったタイプのレースで、 ワサッチフロント100は、 山岳地帯を走るトレイルレースで、 スピードよりも高所で走り続ける力をより求められるレース。 WSは灼熱の太陽の中、 スキーリゾート地からゴールのオーバーンまで下り基調のコースを走り続けるスピードレース。

まずは練習内容を改善していくことから始まった。 Hiroyasu Tanaka (JR Tanaka) さんのオンラインコーチングを正式に初め、 練習内容の管理、 いろいろな問題に対する対処などを細かくみていただいた。

コーチングに興味のある方はぜひコンタクトしてみてください、 一見怖そうですが、 優しい方ですよ。

中でも月一回のズームミーティングが、 ほぼ一人で練習をしていた自分には心の拠り所で、 大いに迷い、 わだかまりができてくる厳しいトレーニング時に、 話をして理解、 解決する糸口になる事は言うまでもなく、 何よりも同じランナーと話せるってことがとても助かりました。

練習初めの冬はNYが寒いということもあって本当にモチベーションも上がらず、 コロナ禍で続いていた生活、 仕事への悩み、 不安などなどが混ざりあい、 不安定な気持ちの中、 心の安定をキープすることが、 1番の自分への課題となりました。

”走ることで保っていた心のバランスが、 走ることがトレーニングに変わってしまうことで、 走ることが、 マインドフルネスにならなくなってしまっていた。”

”どうにか考えの切り離しと充実感を自分に与え、 目標に向かって練習は続けていった。 ただひたすらに。”

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田中さんと一緒に参加した2021年のWasatch Front 100 in Utah.

最も自分が苦手としていたスピード練習をポイント練習に、 トレッドミルでの長時間ランなどなどが組み込まれた練習内容でした。 仕事と家族の関係上、 何度も山にいける状態ではなかったので、 僕の練習場は近所のプロスペクトパークとロードラン、 トレッドミルがメイン。 最後の追い込み時期には週1回、 山でのロングラン (主にベアーマウンテン)。 それらを最大限にこなしても、 ”無理をせず” ”怪我をしない” というのが、 田中さんの指導でした。

もちろん筋肉疲労、 使い過ぎによる痛みなども出てきましたが、 感じ初めの段階で対処して、 大きな問題にならないよう気をつけていました。 怪我をすると全てが止まり、 身体も心も不安定になってしまうというのを以前の経験から知っていたので、 そうならないように自分の体と毎日、 相談していました。 (これすごく大事です)

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4月にはいり少しづつ自分の参加資格への順番が回ってきそうな時期、 コロナに罹りました。 約3年間同じように生活していましたし、 予防も変わらずしていましたが家族で自分だけが感染しました。

時期的に、 練習量が増えて、 免疫が落ちる時期ではあったと今では思いますが、 一体どこで移ったのでしょうか? (ちょうど二週間ほどお酒をやめていた時期でもありましたが、、) 幸いにも症状は軽く、 喉が痛くなり咳とたんが絡む感じでしたが熱は出ず、 5日間は陽性反応が出ていたので自宅隔離をしていました。 何もできないので寝れるだけ寝て身体を休ませようと自分に課して本当によく寝ました。 おかげで筋肉疲労などはとれ、 隔離後は体が軽くなった気がしました。 ただ咳が2~3週間ほど後を引いた気がします。 遅れをとった約一週間を取り戻さねば!

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練習も終盤、 5月に入りほぼ毎週末、 土曜に山に入り、 back to back練習で、 日曜日のロングランをこなすと、 夜はヘトヘトだったのを覚えています。 さらに仕事が重なると本当に寝れない時も。

大会の行われるオーバーンはレース開催時、 太陽いっぱい灼熱40度以上の環境になるため、高温に身体を慣らす必要がある。 最近、 皆さんがよく耳にする言葉、 暑熱順化という行為が必要となります。 サウナ、風呂での温冷浴、 ジャケットなどを着て走る、 室内でヒーターを入れてトレッドミルを走るなどなど。 熱い環境に身体をしっかり順応させる事で、 灼熱の太陽の下でも体がオーバーヒートせず、 温度調整するように順応していく。

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”ウインドブレーカーを着て何度も室内外を走りましたが、 できればもうしたくないなあ、、”

6月1日とうとう僕にレース参加の順番が回ってきました! ”時はきた”

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21年12月に抽選が当たって真っ先にしたのが大会前日に泊まる宿泊施設の予約とエアチケットの確保 (最悪順番が回ってこなくても友人のサポートに行こうと思っていました) でした。 そして少し落ち着いた頃に、 思いついたのがレースに参加するに当たって着用するチームシャツの製作をしようと思いました。

ネペンテスブランドの中で、 トレイル用に応用できる商品があるSouth2 West8にお願いしてみようと無理は承知で連絡させていただきました。 清水さん、 徳郎さん、 健人さん、 二つ返事で相談に乗っていただき本当にありがとうございました。 最高にイカしたタイダイシャツで、 100マイルトレイルレースを走ってきました!

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Roll away the dew と正面に言葉をいれていただいたのですが、 自分の好きなGreatful Deadの曲 Franklin’s Towerの詩から引用させてもらいました。 ステップを踏むようなギターのリズムで、 トレイルをクルーズするときにピッタリな曲。 歌詞にはいろいろな意味があるとは思うのですが、 ”インテンスな事があった後にフレッシュな気持ちで新たに前に進む” っていう意味で僕は解釈してこの言葉を選びました。 詩人Robert Hunterによる歌詞です。 

Grateful Dead, Franklin’s Tower, 10/31/1980, Radio City Music Hall, New York, NY. 

6月に入るとアメリカの子供たちは大忙しになる。 年度末の学校行事が多くなるためです。 うちの子達も周りと同じように忙しさが増していくのと夏休み中に誕生日のくる彼女たちは、 早めの誕生会を友達と開いたりでいつもバタバタした月になる。 僕のトレーニングのトの字も言えない感じで、 空き時間をどうにか探して長めのランや早朝起きて時間の工面に奔走した月でもあった。 ”ほんと、 よくやったと思う。”  

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6月も2週目に入るとようやくテーパーリング (身体のパフォーマンスを下げないように身体の疲労を取る) 時期に入り、 そこまでの練習量の60%に練習量が減る。

レース時に着るウエア、 シューズ、 食べる物、 ジェル、 サプリ、 飲み物、 あらゆるレースで使用するものの最終チェック。 合わないものは使わずに新しいものを試すか、 前から使っているものに戻す。

レースのタイムテーブルを作成して、 コーチと相談したり、 あーでもないこーでもないと同じレースに出る友人や以前走ったことのある方々とズームで話したり、 Textsなどで情報交換、 分からない事があると細かく質問していました。

Podcastに出演したり。
WSを前に抱負などを話している回です。

後編に続く。

AKIRA YAMADA 山田 陽

AKIRA YAMADA 山田 陽

フォトグラファー。 1998年よりNYをベースに活動。 近年は東京との往き来も多くなり、 雑誌、 カタログ、 広告の撮影に携わる。 次回の展示の製作開始。
Website : www.akirayamada.com
Instagram : akirayamada