Inside the Allen Edmonds factory
Allen Edmonds の靴について最初にコラムに書いたのは、もう10年以上も前のことだ。NY店での取り扱いをきっかけに、個人的に夢中になって何足も買い込んでいた時期がある。モデルのレンジは驚くほど広く、それぞれのデザインも独特で、なかには秀逸と呼べるものも少なくなかった。「一体どんなチームが企画しているのだろう?」と不思議に思ったのを覚えている。そんな “不思議の国” から、昨年、突然コラボレーションの話が舞い込んできた。
今の時代、アメリカの高級靴メーカーであっても、生産拠点の多くを海外に移しているのが実情だ。国内生産を維持しているブランドは極めて稀である。そのなかで Allen Edmonds は、海外に拠点を持ちながらも、なおアメリカ生産を続ける希少なメーカーだ。その本拠地はウィスコンシン州ポートワシントン。今回のコラボに合わせて工場視察に招かれ、今年4月末に現地を訪ねた。

空港から車でおよそ1時間。ミシガン湖に面した小さな町ポートワシントンは、観光と漁業が中心で、街並みには古いビクトリア調の建物が多く残る。その郊外、かつて大規模な家具工場だった跡地に、現在の Allen Edmonds アメリカ生産工場がある。これまで世界中の靴工場を見てきたが、規模の大きさ、従業員の数、施設や設備の清潔さにおいて、ここは群を抜いていた。いまもなお、このレベルで自社工場によるアメリカ生産を続けていることに、本当に驚かされた。トランプ大統領が知れば大喜びするに違いない。


今回のプロジェクトは、僕も知らなかったが、最近始まった Port Washington Legend Series の一環だという。ゲストを招き、コラボシューズを開発するという取り組みで、自社工場でのアメリカ生産を強調する企画だ。昨年末に提出したデザイン案をもとに試作サンプルが完成しており、そのチェックや改良点の協議を経て、その場でセカンドサンプルを作り上げる、という段取りだった。
選ばれたデザインは、10年前のコラムにも登場した「Sun Valley」というスキーブーツ。冬季オリンピックのUSチーム用に生産されたモデルだと記憶している。いくつか提案したアイデアのなかで、このブーツを僕が個人的に愛用していたことを先方が気に入り、最初のモデルとして採用された。実は今回のプロジェクトは2型進んでおり、今年12月には第2弾も発売される予定だ。

最初のモデルは、マウンテンブーツにスキーストラップを装着したデザインをベースに、オックスフォードスタイルにアレンジ。ウェルトはノルウェイジャン風のスカロップウェルトを巻き、ミッドソールはEVAのダブルでクッション性を格段に向上させた。軽量で履き心地の良い Vibram のガムライトソール、EGお得意のDリングはもちろん、バックルも特注のブラック仕上げ。素材はカーフの黒と、カウヘアーの黒・焦茶。靴紐はオリジナルと同じシグネチャーのブルーを合わせ、AEのデザイナーが提案してくれた丸みのあるドレスラストを採用した。AEらしからぬスキーブーツを、さらにEG流にデフォルメした一足に仕上がったと自負している。発売が今から楽しみだ。ぜひ店頭で試してみてほしい。

ADIRONDACK LOW HIKER ¥88,000
発売日:10月10日(金)
工場では、上がっていたプロトサンプルを手に、アッパー、ソール、ウェルト、ストラップ、そして研磨からフィニッシュまで、各セクションの職人たちと一緒に、数時間かけて2足のセカンドサンプルを作り上げた。位置の微調整やソールの厚みの検討などを、その場で職人と相談しながら試行錯誤して進める工程は、僕にとっても貴重な体験となった。多くの工場を訪れてきたが、職人と一緒に最初から最後まで靴を仕上げたのは初めてだ。これも AE の工場と職人たちのレベルの高さのおかげだろう。

地元の職人は20年、30年のベテランが当たり前で、親子二代にわたるケースも多い。突然現れた僕にも丁寧に教えてくれて、誇りを持ってサンプル作りに臨む姿勢から、彼らのプロ意識を強く感じた。アメリカ製品の魅力は何か、なぜアメリカ製が特別なのか。その答えはまだ探求の途上だが、その一端を垣間見たように思う。

話は少し逸れるが、この素晴らしい工場はなんと週休3日制を導入している。僕が子どもの頃は日曜だけが休みで、土曜日も学校があった。それがいつしか週休2日が当たり前になり、今や北欧発で広がり始めた週休3日制が、アメリカでも「4-day workweek」としてじわじわ定着しつつあるのだ。
この工場の場合、5日分の40時間労働を4日でこなす「1日10時間勤務」の形態。生産性は変わらず、むしろ仕事以外の時間を農業や副業、趣味に充てられると好評だという。アメリカ国内でも導入企業は5〜10%に増えており、検討している企業は20%以上。この流れが世界的に広がっていくのかもしれない。
とはいえ、NYの厳しい競争の世界には、いまだに「週7日・1日15時間」という猛者も存在している。働きすぎの日本と思っていたが、NYに来てからは、むしろこちらの方が過酷ではないかと感じるほどだ。生活水準だけでなく、働き方そのものにも大きな格差が見えてくる。そんなことを考えさせられるアメリカである。
では、また次回。
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