Ideas from Massimo Osti
しばらくコラムを更新してなくて、もう何だか書き方さえ忘れてる気がします。先ずは少しづつウォーミングアップがてら、今まであった事や、考えた事を思い出しながら再開してみたいと思います。
もう何ヶ月も前の話になってしまったが、フィレンツェでの展示会、ピッティを撤収してまっ先に駆けつけたのは、同じフィレンツェで展示されていた Stone Island というブランドの30周年記念展。初代のデザイナーは、誰もが知る、Massimo Osti という人で、現在は何代目かですが、チーム生え抜きの Carlo Rivetti まで、発足当時からの伝統的なデザイン手法、ほとんど研究と言ってもいいプロセスの300点以上のアーカイブと聞いて、胸ワクワクで出かけて行った。
僕個人的にも、以前勤めていたお店の一つ、渋谷の名店 Nというところが僕がいた80年代頭からこの一連の、CP Company, Bonneville そしてStone Island を一手に扱っていて、それまで VAN、アイビー そして日本のDCブランドで育ってきた自分にはかなり衝撃的だったのを今でも覚えている。ま、値段の高さもさながら、当時好きだったいわゆるモード的なファッションとは一線を画す全然違う種類の、でも非常に高次元での洋服だと感じた。違う価値観というか、洋服の美しさというよりも、そのディテールの美しさ、そしてその美しさは全て必要に迫られて開発されたアノニマスなデザイナーたちによるもので、当時の僕は、もの凄い説得力をもって影響されてしまった。Eyes opening というか、自分の好きな世界をバーンと見せられたような感じで、もう、お腹いっぱいで食べられませーンってのが正直な反応だったかな。
以来、Massimo Osti は僕にとっての永遠のヒーローになりました。随分と後になって、たまたま実息子さんにミラノで会う機会がありましたが、いろいろと話を聞きながら、やはり生前に会いたかったなあと本当に思いました。
その Stone Island の素晴らしい展示の印象がさめないうちに、今度はクリスティーからのメールでこんな本が出てると教えられた。
http://ideasfrom.massimoosti.com/#home
これはもう、Stone Island のみならず、CP Company や、Bonneville, ウィメンズの Left Hand まで、Massimo Osti の集大成の本だ。値段がまたかわいくない。普通の本でも65ユーロで、限定本の方は290ユーロ。かなり迷ったんだけど、結局両方とも購入。
今日、実に僕の誕生日の前日に届き、とたんにハマってじっくりと見入ってしまった。彼は元はグラフィックデザイナーだったらしいが、転じてデザイナー、そしてその彼が集めたアーカイブにある洋服がもの凄い。そしてそれをベースに彼がデザインした洋服たちは、ほぼ僕らがEGでやってきたことにかなりかぶっているものも多い。同じものを見て、それをベースに新しいものを作る。出来上がったものは、当然彼のテイクと、僕のテイクでは違う。でも、その違いが大きかったり微妙だったり、何だか彼の胸のうちを想像しながら見ていると体が熱くなってくる。
洋服好きの人には絶対におすすめの完全保存本です。
CP を着た事がなくても、Massimo Osti が誰だか知らなくても、もしEGが好きな人だったら、必ず響くと思います。値段の価値は僕にとっては十分にありました。最後に、この本の中に綴じ込みで入っている Massimo Osti のコメントで大好きなフレーズを紹介したい。
I was not a fashion designer in the traditional sense of the term, I was, rather, a designer of ” Clothing-objects” which privileged functionality and comfort, rather than maintaining a strict bond with trends. I wanted to make items of clothing whose raison d’etre were founded on a precise strategy of research into materials and forms.
長い間、自分が言い表せなかった事を彼はいとも簡単に表現しているのには、正直参ってしまった。
なんて素晴らしい言葉だろう。
ではまた次回。