Finding Vivian Maier
天才芸術家ってのは皆亡くなってから評価されるもんだ。ってな話は良く聞く話。
ま、確かに歴代の大御所はそんな境遇の人が多い。
でもこの人の場合はどうなんだろうね。
3月の終わり、誘われて見に行ったドキュメンタリー映画の初演。
内容は、製作者が仕事用に近くのフリーマーケットで手に入れた大量の写真フィルム。
現像してみるとどれもこれも素晴らしい写真のように見える。さらにフリーマーケットを探し歩くと同じ撮影者と思われるフィルムがどんどん見つかる。これを今の時代ならではというか、Flickr という写真のシェアサイトに投稿してみると、世界中から大反響、ついにはシカゴで個展が開かれてしまった。
撮影者の名は、Vivian Maier 。
彼女の写真を発掘した映画の製作者はどうしてこんなに大量の写真をどこにも誰にも発表せずに撮りためて、それを残して亡くなったのか、がぜん彼女の人生に興味を持って調べ始める。これがざっとした流れなんだが、見てるうちに何か見覚えのある写真に気がついた。終わり頃に思い出したのは、この製作者が出版した彼女の写真集を僕は偶然2年ほど前に手に入れていた事。当時、古い時代のアメリカのポートレイトを探していて、ググって、アマゾって何冊か手当たり次第に手に入れた中の一冊だった。まさかその写真集に、こんなバッググラウンドストーリーがあったなんて想像もしていなかった。映画が終わった後に、製作者で監督でもあるジョンさんが質問を受けて、さらに数奇な人生をおくった写真家(と言っていいのかどうか)、ヴィヴィアンさんに興味が出てきた。生きてるうちは全く、写真、あるいはアートから遠い生活を送ってきた彼女は、何故かローライフレックスを日常的に持ち歩き、撮影していた。大量のフィルムからもわかるとおり、半端じゃない量を撮影していたのに、その写真を一度も発表することなく、ましてやほぼ現像さえもせずに亡くなってしまった。写真を見る限り、どう見ても素人の腕ではなく、一体いつ、誰に写真の撮り方を教わったのか、謎は深まるばかりだ。
いずれにせよ、彼女の写真を改めて見てみると本当に面白い。
手に入れた2年前は被写体の洋服ばかり眺めていたのだけど、表情やシチュエーションをよく見ているとそこに妄想のようなストーリーが頭に浮かんでくる。撮影した彼女の視点、何を面白いと感じて撮ったのか、何を切り取って見せたかったのか、なんとなく見えてくる気がするから不思議だ。ま、本人の写ってる写真も凄いけどね。怖くて。いろいろと試行錯誤の跡も見えるし、狙い過ぎの部分も感じられたり。これは僕の全くの独断的な考察なので、真実とはかけ離れてるかもしれないけれど、それは、それでいいのだと思っている。
ふとジマの写真も近いなあと思った。
ま、彼のはストリートフォトというよりは、なんか盗撮系だと思うけど。
彼の場合も視点が独特で面白い、不思議な、気持ち悪い瞬間を切り取る。
本人はひょうひょうとしていて分かって撮っているのか、偶然なのか、たまに疑ってしまうくらいに。
いつかジマに聞いた事があった。
こんな写真を過去に撮っている人はいるのかと。
確か、Garry Winogrand を挙げていたと思うが、全然違う気がする。
今彼は、アメリカ南部に仕事で出かけていて、いつもNYの街を撮り歩くように田舎町を自転車に乗りながら(免許がないので)撮っているはず。 持って帰ってくる写真が今から楽しみだ。
ではまた次回。