Curiosity
以前にこの欄でも書いたNYの雑誌、「Garmento」の主催者、Jeremy Lewis君に先日会う事ができた。今動いているプロジェクトためにインタビューがあるというので、個人的な興味からその場に参加させてもらった。元より彼の雑誌には非常に興味があり、その幅広い、そして特に古い時代というか、70年代から80年代のNYファッションにフォーカスした記事群にはかなり衝撃を受けていた。ファッションというのは基本今の、これからの、新しい、もっと新しいものを取り上げるのが普通だから、彼の雑誌のようにちょっと前の時代を切り抜いて紹介するスタイルも非常に新鮮だった。
もっとも、この時代に詳しい人は今や大御所か、すでに消え去った人が多くて中々難しいのだろうが、突然彼の雑誌の記事はかなり詳しく掘り下げてあり、一体どういう人なのかと彼自身への興味も募りまくっていたところ。もちろん勝手な先入観ではあるが、多分僕と同じ世代か、それ以上の年配の人ではないかと想像していた。が、しかし当の本人はまるきり僕の予想に反して、何と若干26歳。ちょっと信じ難く、それも自分でも確かめたかった。
インタビューの内容は詳しく書けないのだけど、彼の話を聞いていて非常に感銘を受けた。
確かに若く26歳ではあるけれど、文字に書いてしまうと陳腐になり易いが、いわゆる情熱を感じる。自分の言葉で語る意見にも不思議に力強い説得力がある。そして自身が生まれてもいない時代、70年代から80年代のNYファッションシーンに関しの知識がもの凄い。次々と口に出るデザイナー名は、僕にとってはよく知ってる懐かしい名前も多い。どこでこんな知識を身につけたのか?れそは学生時代に出会ったメンター、つまり指導してくれた、教えてくれた先生がいた。その先生は70年代にNYで活躍したデザイナーであり、優秀な評論家でもあった。もちろん膨大な知識、そしてセンスの点でも多大な影響を与えたのは確かだけど、彼自身も元から興味のあった建築、プロダクトデザインの枠からファッションへの知識、特に歴史的な検証を図書館の資料を元に勉強したというのだから凄い。そして決定的なのはインターネット。今やこれ無しには情報を収集できない。それでもやっぱり、最終的にはその情熱なんだと思う。飽くなき好奇心というか、強い興味を支える熱意がないとここまでは出来ないだろう。彼の語った事で記憶に残ったのは、服装はその人の考え方、生き方を表す、そして洋服は言語だというもの。文法や句読法があって文章が成りながら、その言い方、書き方で相手とのコミュニケーションが変わってしまう。聞いていて、なるほどねとほとほと感心してしまった。
そんな時期にもう一つ。
ちょうど1年半くらい前に1人の日本人の青年がいきなり連絡してきてインタビューをお願いされた事がある。雑誌とかの取材ではなく、完全に個人的な理由でのインタビュー。こういう場合、通常は受け入れにくいのだけど、先に知り合いのインタビューと取っていた事もあり、また彼の話が面白かったせいもあり受けてしまった。彼は大学を終えて、そのまま就職というのではなく、その代わりに世界中に旅に出た。そしてその行き先々で自分の興味ある人に、自身が直接連絡してずっとインタビューを取って廻っていたようだ。そしていつかこのインタビューを本にまとめて出版したいという事だった。やっぱり彼の話には興味を惹かれ、そしてその言葉に情熱を感じたのを覚えている。
若いのに行動力が凄いなあと、頑張って早く本が出せると良いねえと言っていたと思うのだが、その本がすでに出版されていた。送られてきた彼の本はとても個人的に作った本には見えない、立派な本でびっくりした。そういえば彼の友人にも仕事人たちがいて、いろいろと協力してもらいながらと聞いたのを思い出した。それを分かった上でも、本の仕上がり、デザイン、レイアウトは素晴らしいものだ。
ちょっとホールアースカタログを意識した部分もあり、この辺はきっとスティーブジョブスあたりの影響が強い今の若手の象徴だろうが、本当によく出来ていると思う。
自分の好きな事をとことん追求して、その成果を表していく。
Jeremy君にしても、この日本の青年にしても、今や国境や時代を越えて、今時の情報を駆使しながら独自のアプローチで市場に発表していく様は見ていても楽しい。 そして何か自身の若かった時と重ね合わせて見ている自分がここにある。 彼らの次の仕事がとても楽しみになってきた。
ではまた次回。