Director's Note

by TOKURO AOYAGI

コンプリーテッド / ノット・コンプリーテッド

焚き火は楽しい。細い枝から燃えやすい順に重ねた薪の下に、焚き付けを仕込んで火を付ける。煙が出てきたら、焦らないでじっと待つ。薪の中心に熱が籠ったところで息を吹いてやれば、薪の間からメラメラとオレンジの火炎が噴き出して、焚き火の準備は完了(コンプリーテッド)。フィールドの闇は来るのが早い。暖と灯を手に入れた安堵と、火をコントロールした満足感に包まれながらも、素知らぬ顔で粛々と次の段取りへ移るのが大人の振る舞い。

火起こしの方法には皆それぞれ一家言あるもの。自分の場合は、枕木の下に石を置いて隙間を作るのと、焚き付けに杉の葉や松ぼっくりをよく使う。細い枝は億劫でもできるだけたくさん集める。その他はあまり気にせず適当。薪が少々湿っていても気にしない。煙の量に関係するとは言え、木の種類もあまり気にしない。ひとつだけ気になるのが、焚き火やBBQでの火の粉。これがやっかい 寒い時期は化学繊維の防水素材を使ったアウターを着ていることも多くて、ちょっとした風や薪を動かす際に上がった火の粉に、うわうわうわと大慌て。特にスタンディングでのBBQの場合、火が高い場所にあるので、気付かぬうちにダウンジャケットやマウンテンパーカにピンホールが開いたこともしばしば。あれは地味に悲しい。

今やアウトドア業界にも浸透してきた感のある難燃(なんねん)素材という言葉。つまり、燃えにくい加工を施した素材のことで火の粉に強く頼もしい。SOUTH2 WEST8 からも、NANGAとのコラボレーションとしてついに難燃素材の国産ダウンジャケット&パンツが発売となったのは既報の通り。実に嬉しいのだけど、美瑛ブランチで他の人と被りそうで、どっちの色にするかが悩みどころ。個人的なポイントは素材感。テカテカ/ツルツルな素材が多い中、生地の織りがうっすらと感じられるマットな生地が、街にもフィールドにも馴染んでくれる。写真じゃちょっと伝わらない。。これはぜひ店頭で。

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田中かえちゃんから聞いて、遅ればせながら覗きに行った江口寿史展 「ノット・コンプリーテッド」がとても良かった。しかも会場で横を観たら、ご本人がいらっしゃってびっくり。来場者の平均年齢は予想通り高かったけれど、若い子もちらほら。勉強熱心で感心。漫画時代の江口作品というか、原画もたっぷり見れて(というか読めて)楽しい。鑑賞後のこちらの気分もまたノット・コンプリーテッドで、すでに再訪したくなっている。展覧会を開催している世田谷文学館の脇では、見事な錦鯉も拝める。来年までやってるのでお代わりしたい。

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なんの前触れもなく投下された、山田太一先生の未発表シナリオ集。予約して届いて、すぐ鎮座して一気に読了。静かな驚きと円熟した人間味に溢れた最高な結末。今になってこんなご褒美をもらえるなんて思いもしなかった。感謝です。こちらは晴れてコンプリーテッド。

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今年最後の北海道は帯広。久々のスチール撮影担当で、気分もピリッと原点回帰。 “十勝晴れ” の言葉通り、快晴続きの気持ち良いフィールドをカメラと共に歩き続けた。初日は特に気持ち良すぎたのか遠くに行きすぎ、気が付けば皆で5kmくらいの距離を遡行。気付いたときには日も暮れ始め、駆け足で夕日と並走。毎日報道されている熊のニュースが頭をよぎりAPPLE MUSICもON。曲はあえてAOR。熊もきっとメローな気分になってくれたはず。

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SOUTH2 WEST8 STORE MANAGER MASAKI FUJIWARA

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TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。
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