日傘始めました。

独り店の前で 「うわっ」 と思わず声が出た。 煮えたぎる真夏の神宮前で、 NEPENTHES TOKYOのシンボルツリーが開花。 このトックリランと呼ばれる植物の開花は、 ときに数十年に一度の場合もあって、 とても気まぐれ。 皆さん是非お見逃しなく。 しかも、 こんなに花芽を一斉に出すなんて、 なんだか怖いくらい。 メキシコ原産の品種だから大丈夫と思うけれど、 今年の夏は真夏日の連続でちょっと心配。 いよいよ地球を温暖化させた報いがきたかと諦めつつ、 一生縁がないと思っていた日傘を使ってみたら、 これが予想以上に快適で、 あるとないとじゃ大違い。 すっかり必需品になってしまった。

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日傘がレース使いで、 ご婦人向けだったのは遠い昔。 今や市場にはアウトドアメーカーのものから、 メンズ向けのシンプルかつモダンなものが揃う。 そんな日傘をさしながら、 パタパタと扇子を仰いで向かったのは、 奥渋谷。 コロナでしばらくお会いできていなかった太田和彦さんと久々の一献。 気になるお店はというと 『酒とさか菜』。 本当に何を食べても美味しい名店。 日本酒のこだわりと、 静岡おでんが人気。

太田さんはますますお元気で、 つい最近も二冊の新刊を出されたばかり。 映画、 演劇、 音楽、 デザイン、 建築、 食。。 話は尽きることなく、 毎度楽しく勉強になる。 例えば、 なぜ浅い盃 (さかずき) が好きなのかと問うた答えは、 「ぐい飲みは香りをこもらせ、 飲むときにあおるので姿がわるく、 しかも一気に入ってきます。 浅い平盃は香りがひろがり、 縁を唇に当て、 すこし傾けるだけでスイと飲め、 様子がきれいです。」 太田さんの説明はいつも淀みがなくて品が良い。 以前インタビューさせていただいてから、 ずいぶん時間がたったので、 そろそろまた一緒にお仕事をしたいと思っています。

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新刊のひとつがこちらの 『日本居酒屋遺産』。 創業が古く昔のままの建物、 代々続けている、 老舗でも庶民の店を守っている、 という三つの条件を満たした居酒屋を、 グラビア (撮り下ろしの写真の色が良い!) と太田さんの文章とイラストで、 200ページ以上のボリュームにまとめた決定版。 はえある一軒目に紹介されているのが、 『NEPENTHES IN PRINT』 #7 北海道特集号でも紹介した 「独酌三四郎」 。 とっても嬉しい。 素晴らしい本でした。

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太田さんは、 カメラマン鈴木新が 『NEPENTHES IN PRINT』 の取材で撮影したこの写真をいたく気に入ってご自分のプロフィール写真的に使ってくれており、 会うたびにお礼を言われる。 気取らず気さくな太田さんを収めた良い写真。新ありがとう。

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TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。