#79

ハリー・ディーン・スタントン最後の主演作『ラッキー』が忘れられない。

ギリギリ滑り込んだ渋谷のアップリンクを出て
大好きなお店でゴハンを食べているときも、『ラッキー』の話が
できなかった。言葉にして話すことができなかった。

2017年9月に91歳で亡くなってしまったハリー・ディーン・スタントン。
初の監督をつとめたジョン・キャロル・リンチが、スタントンの人生をなぞるように作り上げた、ラブレターのような作品。スタントンが、この映画の完成を待たずして亡くなってしまったのはあとで知ったエピソードだった。

孤独と一人は、同じじゃない。
「人生の終わり」にファンファーレは鳴り響かない。

すべての人に訪れる人生の終わりを、どうするのか。

小さな町でいつもの人々と関わりながら暮らす毎日の中で、人生の終わりを悟っていく90歳のラッキー。
時代を生きて来た名優、ハリー・ディーン・スタントンの顔や手に刻まれた皺のひとつひとつ。
渋谷の小さな映画館でそれを観ている自分。

淡々と描かれる日々、スペイン語で歌う彼の姿を観て
なんであんなに涙が止まらなかったんだろう。

40歳になる自分。家族。夢中で走って来たこれまでとこれから。

「俺の人生はこんな感じだよ」

映画の最後、スタントンの顔が忘れられない。
やっぱりうまく書けなかった。
でも、ぜひ観て欲しい映画です。

監督:ジョン・キャロル・リンチ(『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』出演)
出演:ハリー・ディーン・スタントン(『パリ、テキサス』『レポマン』
『ツイン・ピークス The Return』)、デヴィッド・リンチ(『ツイン・ピークス』
『インランド・エンパイア』監督)、ロン・リビングストン(『セックス・アンド・ザ・シティ』)ほか 
配給・宣伝:アップリンク

映画『ラッキー』公式サイト:http://www.uplink.co.jp/lucky/

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A.D.O 亜童

A.D.O 亜童

フリーランスの編集者、ライター、ディレクターとして雑誌やWEB、広告、映像のディレクションをつとめる。昨年、自身のクリエイティブ・カンパニー「E inc.」を設立。新たなコミュニケーションを模索中。人生一度きり、の思いを掲げ、自らのお尻を叩きながら前へ前へ。鹿児島出身、目黒区在住。
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