一月に入ってからノーザンプトンにある工場に行く回数が増えました。革製品を生産していた大きな工場が、残念ながら他の会社に買収されて、工場ごとイギリス北部のレスターに移動することになり、いらなくなったたくさんの古い在庫の処理に協力することになったのです。その在庫というか、デッドストックの数はすごかった。この工場はとっても大きい工場で、今まで、たくさんの有名ブランドの革製品を生産していたそうで、宝物がたくさん出てきてびっくり。
新しい工場のサイズは今までの半分になってしまうらしいけど、完全に閉鎖されるよりは良い。ノーザンプトンは昔から靴や革の工場で有名ですが、やっぱり不景気と中国生産の台頭で、年々少なくなってきているそうです。いま現在、ノーザンプトンに生き残っている有名な靴の会社は、100年から150年も歴史のあるEdward Green Shoes、Crockett & Jones、Church's、そしてTrickers。Church’sだけがプラダに買収されましたが、工場とオフィスはまだノーザンプトンにあります。これらのブランドには、イギリス伝統ブランドとして、これからも国内で頑張ってほしいです。
そんなこんなで、忙しくしていたのですが、一月といえば、たくさんの美術館やギャラリーでは新しいエキシビションが始まる時期。ピカデリーサーカスにあるロイヤルアカデミーオブアーツでは、21日からDavid Hockneyのエキシビションが始まりました。
初日に行きたかったのですが、その週末も工場にいかなくてはならなくて、結局この為だけに平日の朝に半日だけ休みを取って行ってきました。チケットは現地でしか購入することができないから、朝10時のオープンと同時に到着するように家を出発。そして到着すると、なんとなんとチケット売り場に大行列が!しかも、100人以上はいる行列。ホックニーが人気なのは知っているけど、平日の朝でこんなに人が並ぶほどとは。。とても残念でしたが、この行列に参加するまでの時間はなかったので、この日はしかたなく断念。
気を取り直して、次の日の夕方に再挑戦。美術館は6時閉館。仕事終わりで来たから、45分しかない。最後にショップも絶対に見たいし、頑張って早足でまわる。でもやっぱり好きな絵の前では、知らず知らずのうちに足が止まってしまう。入口に一番近い楕円型の大きな部屋に、草原の真ん中に何本かの木が立っている風景画が部屋の四方に飾られていて、一見どれも違う風景画にも見えたのですが、よく見るとホックニーお得意の一つの景色を春、夏、秋、冬に描いたものでした。色使いがとっても奇麗。最初の部屋で、もう感動です。
ホックニーは1960年代初頭に「ポップ・アートの旗手」として登場しました。でもホックニー自身は、ポップ・アーティストとしての位置づけに異議を唱えているそうです。彼は暗くて色彩に乏しいイギリスのブラッドフォードに生まれ育ち、そしてロンドンへ。初期に描かれたヨークシャーの絵も2枚あったのですが、これらはイギリスの暗いイメージが忠実に表現されていて、基本的に使われている色もグレー。
1963年、彼は太陽が眩いカリフォルニアを初めて訪れました。そのカリフォルニアの素晴らしさに、結局、彼は半生を過ごすことになります。カリフォルニアの陽光と、それがつくる濃い影は、ホックニーのイマジネーションをかき立て、彼の創造を促す源泉でした。
この頃の彼の絵はロサンゼルスでの日常生活の断片、例えばプールサイド風景、シャワーを浴びる青年、富裕なビバリー・ヒルズの住人たちの閑雅な生活、親しい友人を描いた肖像画などで、いずれも同時代の画家たちが目を向けなかった題材です。南カリフォルニアの陽光と色彩、自由な生活は、ホックニー・スタイルを生み出しましたといってもいいでしょう。
美術館には80年代に描かれた、あの有名なグランドキャニオンの絵もありました。この絵が展示している部屋にはロサンゼルスの街を題材にした絵がたくさん展示してあり、どの絵もとっても明るくて、その部屋にいるだけで、ロザンゼルスの太陽の暖かさを感じた気がしました。実際、着ていたコートを脱いだのもこの部屋でした笑。
そして、その次の部屋からは彼の故郷であるヨークシャーの風景画が続きます。同じ題材を描いたものでも、暗くグレーな作品とそれとは真逆な明るい色が使われてた作品もあり、それらは同じ画家が描いたものとは思えないほど。
私が一番好きな絵は写真の2作品。早足の45分でしたが、とっても満足したエキシビションでした。最後はミュージアムショップへ駆け込み、閉館5分前。ポストカードを何枚か選んで、エキシビションに行くと必ず買うマグカップを購入。そして今は、このマグでティーを飲みながらのコラムです。
David Hockney RA: A Bigger Picture
Royal Academy of Arts
Burlington House
Piccadilly
London W1J 0BD
21 January - 9 April 2012
宮迫 亜矢 AYA MIYASAKO
1998年渡英。
ロンドンを拠点にフットワーク軽く世界を飛び回り、ホーム&
アクセサリー
デザインの分野でディレクター、コーディネーターとして活躍中。京都出身。