ファッションデザイナーでもありアーティストでもある、イギリスというかロンドンのデザイナー、Simeon Farrar(シメオン・ファラー)。近頃はファッションレーベルの方が忙しいので、長い間個展をするとができなかったと言う彼。念願の個展が
ソーホーにある小さいブティック「Pyrus」地下のBasement Galleryというギャラリーで、11月23日まで行われています。
プライベートビューは狭い空間にたくさんの人が集まり大盛況でした。もしかしたら以前に彼の洋服のコレクションについて、少し紹介したかもしれないのですが、洋服もアートも彼のイラストレーションと手作業のスクリーンプリントが特徴です。
今シーズンの洋服のコレクションはGreat British Summerをテーマに雨や雷、お化けなどをモチーフにしたとってもイギリスなデザイン。メンズはTシャツや、シャツが主流。女の子のコレクションは、生産、営業、プレスと何でもこなす日本人のミカさんによってデザインされた洋服に、シメオンのイラストレーションとプリントが加わります。
このシメオンのスクリーンプリントですが、毎シーズンどれだけ沢山のオーダーがきても全て本人を筆頭に、スタッフみんなで一枚一枚なんと手作業でプリントされています。まさに世界に一つしかない洋服が、あの小さいスタジオで生産されているということが素晴らしい。実際に生産中のスタジオにはお邪魔をした事がないのですが、スタッフから聞く話だと相当大変そう。その上、プリントだけではなく、その後に水で洗い流すという「ウォッシュ加工」というコレクションもあるのです。私はこちらの加工のほうが好きなんですが、やっぱり時間と手間が掛かっているだけに、仕上がりはとっても素敵です。
仕上がりの感じはプリントされたインクが水で薄くなって、そのインクの染みをそのまま残したものや、青や赤のインクを同時にプリントして、それをウォッシュ加工したものなんかは2色のインクが混じってできた模様がとっても綺麗。
以前に一度だけ、展示会に出席することができなかったシメオンとミカさんの代わりに、すこしだけ展示会のお手伝いをしました。この頃はまだシメオンと一度しか会ったことがなく、そんなに彼のことを知らなかったのですが、展示会中に来たたくさんのバイヤー達の反応をみていると、シメオンがどれだけみんなに親しまれいるかがすごく伝わってきました。そしてそのあと実際に何度か会って実感。スタッフもみんないい人で、いい人のところにはちゃんといい人が集まるようになっている。自然の法則ですね。
そんなシメオンの個展は「Of Rainbow and Halos」。虹の鮮やかさ、そして天使の輪がテーマでした。その名前の通り、ギャラリーはシメオンの幻想的な世界が広がっていました。
ギャラリーの真ん中に建てられた小屋のなかには典型的な天使じゃなくて、現代の女の子に天使の輪がついているポートレイト画がたくさん飾られ、奥の小さい部屋には、たくさんの可愛らしいアンティークの香水ボトルがテーブルの上にいっぱいに置いてあり、そのボトルが溶けて、溶けたガラスが床に流れ落ちている作品がそっと置かれていました。
洋服もそうだけど、彼のデザインは一見とっても色鮮やかで、ポップで、可愛らしいイメージがあるけど、実はよく見るとプリントの効果もあってか、繊細でダークにも見える。色でたとえると原色ではなく、ぼんやりとした灰色。もしかしたら実際にプリントの色が、灰色で、しかもウォッシュ加工をしているから、ぼんやりとしたイメージがあるだけなのかも。どちらにしろ、それがシメオンの幻想的な世界を創り出す技なんだと思います。
宮迫 亜矢 AYA MIYASAKO
1998年渡英。
ロンドンを拠点にフットワーク軽く世界を飛び回り、ホーム&
アクセサリー
デザインの分野でディレクター、コーディネーターとして活躍中。京都出身。