大切な人たちの結婚式がなんと4回続くという、なんともうれしくておめでたいムードの中におります。財布も歓喜の悲鳴をあげています。僕のバンド、SUNABAのアルバム2枚プロデュースをお願いした窪田晴男さん。52歳の今年、ついに愛する女性とご結婚!ギタリスト、作曲家、音楽プロデューサーとして坂本龍一さん、井上陽水さん、フィッシュマンズ、松任谷由実さんなど蒼々たる面々と共におられる日本のトップミュージシャンです。元々は、雑誌のお仕事でお世話になっていたデザイナー、シマダヒデアキさんに紹介していただいたのがきっかけ。それから何度もお酒を飲み飲み、「亜童の感じだったら、僕が何かお手伝いできるかもしれない」と言っていただき、アルバムをプロデュースのお話に繋がったのです。
曲の土台が出来たら晴男さんの家にお邪魔して、譜面を起こし、晴男さんがベース、ギター、ドラムのデータをプログラム。僕はギターと歌を入れてデモを作成。それをスタジオにてバンドへ落とし込み、曲を仕上げる。そんな工程を繰り返しながら、さらに詞の世界観についても色んな話をしながら書き上げていきました。
「ライフスコープ」というミニアルバムは、友人の別荘を借りての合宿レコーディングした作品。トラックいっぱい
のレコーディング機材たちを搬入し、僕らメンバーと晴男さんだけの共同生活。朝起きてメシ、RECが夕方まで続き、買い出しに出かけ、晩メシ。その後は曲について、音楽について色んな話をしながら晴男さんを囲んで酒を飲む。そんな日々を繰り返しながらアルバムを作っていきました。お父さんとおっきい子供たち、みたいな不思議な家族感(笑)。東京を離れて、24時間生活を共にしながら作ったアルバムには、とても身近であたたかい生活と感情の空気が流れています。東京にいて、レコーディングスタジオに通いながら作った音源とは明らかに音楽の鳴り音が違う。
音楽って、音って本当に不思議だなあと痛感させられる出来事でした。
晴男さんには色んなことを教えてもらいました。一番強く言われて残っているのは「アドウは“赦す”ことを覚えなさい」ということ。赦す、は仏語にも使われているようですが、許可やOKをすることでなく、なんだろう、許容とか受け入れる、とか包み込んで取り込んで、それをカラダに入れてあげるとか、んなイメージですかね・・・。とても難しいです。そこに怒りや苛立ち、歯がゆさが出てきてしまうから。まだまだ自分は出来ていません・・・。人生のテーマです。晴男さんと話していると、音楽のことがとても好きになります。自信もくれます。とてもいい曲が書けるような気がしてくるのです。
そんな晴男さんのパーティには、これまた蒼々たる顔ぶれの文化人、音楽人の方々がいらしておりまして、大変興奮したんです。パーティの最後、用意されたステージには「s-ken&Hot Bomboms」の面々。30年以上、音楽シーンのトップを走り続けている方々が鳴らす音の塊。イントロのッハイハットが刻まれるだけでカラダが動き始めるのです。武道館にキャロル・キングとジェイムズ・テイラーを観に行った時の感覚にとても似ていました。次々と重なる鍵盤、ホーン、ギター、ベース、声のアンサンブル。鳥肌は止まらず、気がついたら自分、泣いてました。晴男さんがギターを弾く姿は、とにかくかっこいい。普段は半ズボンにヨレヨレの大きめなTEE、腰にはちっちゃなポシェット。そんな晴男さんがギターを弾く姿はとにかくかっこいいのです。1つのことを追い続けて究めようとして辿り着こうとして。そこにはいつも情熱と愛情があって。そんな人たちが鳴らす音ってこんなにも人の心を揺さぶるんだなあと。
そうして次の週は、淳の結婚式へ。淳は、みんなでよく通っていた恵比寿のBARのバーテンダーでした。同じ年で、朝まで飲んでは互いの目標や夢を語ったものでした。そのBARがなくなって、それぞれの場所で頑張っているのは聞いていたのですが、淳はついに念願だった日本酒のお店をオープン。びっくりしたのが、淳は自らが敬愛する社長のお店で働きながら、ということ。とんでもない馬力です。自店の経営も軌道に乗せ、さらに次の展開も考えている、とのこと。
20代の頃に築いたものは、それはそれ。すべては繋がっているけれど、30代で成し遂げなければならないことはもっとあるはず。最近止まっているような気がして、でもどこかでこれまで築いた道に慢心している自分もいたのは確かで。人生は一度きり。そんなに時間があるわけじゃない。自分は何がしたいのか。どこに情熱を傾ける力があるのか。今一度自分に問いています。最高の2人から学んだ、とてもおめでたく、ありがたい結婚WEEKでした。
亜童 A.D.O
フリーランスの編集者、ライター、ディレクターとして雑誌やWEB、広告、映像のディレクションをつとめる。雑誌『THE DAY』(三栄書房刊)のクリエイティブディレクターとしても活動中。人生一度きり、の思いを掲げ、自らのお尻を叩きながら前へ前へ。
鹿児島出身、目黒区在住。
http://thedaymag.jp/