いつものようにショーツにシャツな格好で外に出たら、びっくりするほど寒かった。ここ最近はなんだか急に秋めいてしまっています。何ヶ月ぶりなんだろう、靴下履いたの。空気も澄んできて、空の表情がとても豊かになるこんぐらいの季節は、ため息とか出ちゃって、なんだか何かと切ないです。特に深い理由があるわけではないんだけど。今年もおセンチな季節がやってきたのです。
溶けてしまうんじゃないかというぐらい夏の、しかもものすごい暑さの夏を過ごしていたはずなのに、今となっては全然思い出せないのが不思議。こうして季節は移ろっていきますが、特に寒い方へ向かって行くときに切なさを感じるのかもしれません。このなんとも言えない感情を忘れたくなくて、「夏のおわり」という曲を書きました。日が暮れて、涼しくなって、空を見上げながら聴いて欲しい曲です。つい先日、渋谷の7階で歌わせてもらう機会があったので、迷わずこの曲をライブの最後に持ってきました。夕日が差し込むビルなので、そんなタイミングで歌えたら最高だな、と思いながら。でも、この曲を歌う頃には辺りは真っ暗だったな。渋谷の街のネオンに包まれてたな。人生におけるバツグンのタイミング、ってのはそんな簡単に訪れないということなんですね。
既に冬の重衣料は展示会でオーダー済みでして、あとは冬の足音と商品の到着と、そして共に訪れる恐怖のお支払いを待つのみなんですが、秋のこんぐらいに着る服がやっぱり欲しくなって久しぶりに街をうろついてみました。ここ数日なぜか気になっているネルガウン。単純にネルシャツ買いすぎで飽きちゃって、でもやっぱり好きだけどオーダーしてるコートも待ちきれないし、みたいな思考がミックスされて出てきたのがネルガウンだと理解しています。ということで久しぶりに古着屋さんへ。最近ではめっきり古着屋さんも元気がなくなってきてるように思います。昔行ってたとこもいくつかクローズしちゃってるし。というのも新モノたちの加工技術やサイジング、素材たちが格段によくなって、というのが大きいように思います。たたずまいは野暮ったいのにシルエットは着やすくてきれい、値段もこなれてる、そりゃあ買っちゃいます。
そんなことを思いながらお目当てのネルガウン。いろんなのがあります。ペンドルトンのウールガウンもあります。うれしくなって試着。鏡に映った姿を見てがっくし。そう、その姿は完全に家でダラダラしているおじさん。ネル素材とは言え、チェックとは言え、自分が着るとただのパジャマ。むしろまずい。うなだれて店を退出。
目的がなくなってしまったので、ふらふら街を歩きながら知らないお店にもリサーチを兼ねて入ってみました。確かに素材もよくなって技術もあがって、みたいなことはとてもステキなんですが、どこも同じような顔をしていて切ない印象。まったく購買意欲をそそられず、歩き倒して終了。ヴィンテージをモチーフにしているんだけど、なんだかグッとこないのはなんでだろう。みんな同じところを向いて、同じようなアプローチをしているような感じがするからですかね・・・新しいシーズンの立ち上がりって、どこのお店も熱がこもっていてとてもわくわく楽しいはずなんですが、どうにも顔が同じ印象なのでうーんという感じでした。その分レディスはとても面白かったです。美しいしユニークだし、エレガントだし。眺めていてとてもわくわくしました。
何が言いたいのかよく分からなくなってきていますが、経年のよさをそのまま現してくれているのはアコースティックギターかなと(笑)。僕はアコギを弾きながら歌うのですが、レコーディングの時にプロデューサーから貸してもらった1950年代のGIBSONのアコギ。
博物館級のモノで、枯れた木の素晴らしく豊かな音がするんです。
’70年代モノだと思いますが、メーカー不明なのに奇跡的にすごい音がするアコギもレコーディングで使わせてもらったな。そんなことを思い出しました。また弾いてみたいなあ。
こんな秋の夜長は、ぜひ「Aadd9」「Fmaj7」のコードを
鳴らしてみてください。
すごいです。切なさが(笑)。
亜童 A.D.O
フリーランスの編集者、ライター、ディレクターとして雑誌やWEB、広告、映像のディレクションをつとめる。雑誌『THE DAY』(三栄書房刊)のクリエイティブディレクターとしても活動中。人生一度きり、の思いを掲げ、自らのお尻を叩きながら前へ前へ。
鹿児島出身、目黒区在住。
http://thedaymag.jp/