#59
22歳からフリーランスで生きてきた。
そんな自分は、昨今耳にするようになった
いわゆる「ノマド」だった。
出版社から出版社へ、会議室から会議室へ
カフェからカフェへ。
雑誌「THE DAY」を作っている時なんかは特に
編集部を持たなかったので
「FRAMES 中目黒」に12時間いるなんてことは
日常だった。
ランチ打ち合わせ、企画会議、写真セレクト
原稿書き、ラフ描き、コーヒー、打ち合わせ
企画会議、ラフ描き、原稿書き、晩メシ打ち合わせ。
FRAMESのお店の方々にも本当にお世話になった。
顔を見るなり、電源と予約専用席を確保してくれる。
予約専用席はボックスになっている6人掛けで、すごい安心感。
そこに1人座り、入れ替わり立ち替わり 打ち合わせ相手が回転していく。
夜のタイミングの人と、そのまま晩御飯を食べる。
そんな具合。
全国誌の「THE DAY」は、
中目黒のカフェで作られていたのはここだけの話だし、
今だから言えるはなし(笑)。
去年、自分の事務所を作ることができた。
「自分の場所」の定義ってなんだろうか。
FRAMESもある意味、自分の場所だったけど(笑)
自分が考える自分の場所は、いつでも本があること。
Aというテーマについて考えるとき
Aにまつわる情報だけを集めて何かができることは
自分の場合、決してない。
CやGやFというまったく関係ないと思われるものがつながって、
自分が考える「A」が出来上がるから。
本は先人たちの知恵だ。
思い当たるがまま手を伸ばせば本がある
本に取り囲まれている状態こそが「自分の場所」の定義だった。
だからノマドな暮らしをしているときのバッグの重量は
凄まじかった。肩がちぎれるかと思った。
事務所へは自転車で行く。
ノマドのときには日常が全部繋がっていたから気がつかなかったけれど
目黒通りから山手通りを走り、明治通りに入るあたりで
頭も体も切り替わる。
鍵を開けて、アシスタントに挨拶をして席に着く。
コーヒーすすって、仕事を始める。
大好きな沢木耕太郎さんの「246」を思い出した。