気分はもう流離い

さすらいもしないでこのまま死なねえぞ、と歌ったのは奥田民生。きっと今もたまにはそんな気分なんだろうと思う。一度流離う(さすらう)と、そんな気分は解消されるのだが、知らぬ間にまた蓄積される。そして気が付けば、またそんな気分にがんじがらめに束縛されている。これはもう本能であり、眠っていた野生の覚醒。先週もそんな気分がちょうどハイオク満タンとなり、荷物をまとめて旅に出た。目指したのは、結局半年前と同じ場所。日本の北端にある風の村。風が強くて、寒くて、遠い。この遠さに意味がある。そこには何もない。ただ湿原だけがあり、黄金色の葦に縁取られた美しい川が、オホーツク海に注いでいる。そして、その流れには日本が世界に誇る川の王者が生息している。

毎日夜明け前に湿原へと車を走らせ、日の出から日の入りまで休まず竿を振り続けた。広大な空は休むことなく雲を運び続け、深い藍色の流れは潮によって形を変え続ける。自分の存在が希薄になり、慌てて遠くのカモメや同志を眺めて気を休めた。その場で竿を投げ出して寝ようが、海岸をどこまでも歩こうが、山へと向かおうが、帰って酒を飲もうが、やっぱり旅をやめようが、何をするのも自分の勝手なのが素晴らしい。普段の生活では麻痺してるだけで、本当は誰もそれほど自由じゃないってことがよく分かる。

誰ひとりいない場所で、川の王者と手合わせをした。心身ともに削られて、見事に腑抜けになった。終わってからしばらく、独りその場で座り込んでいた。王者は二度宙を飛んだ。その姿が目に焼き付いて離れない。細山さんへの弔いのようだった。途中、帯広から相棒が来てくれた。毎日クタクタで、最高だった。人生でこんなに真剣に遊んだのは初めてかもしれない。間違いなく新しいナース・ログになった。

風の村の橋の下で相棒とハグをして別れ、今度はSOUTH2 WEST8号が待つ旭川へと向かった。新しい仲間も加わった釣行撮影。大勢での旅はまた別の意味で楽しい。9日間に及んだ北海道の日々の後半については、また改めて。

東京に戻ったら、EGの店にNEW BALANCEの新色が届いていた。
これはまさに今の気分!Nマークもソールもブラックでカーキとオリーブのコンビネーションも良い。大人も履ける渋いカラーリングが嬉しい。流離いにもぴったり。

それにしても、今季は良い靴が重なりすぎだ。。
〈EG〉x〈DANNER〉の後は、〈EG〉x〈TIMBERLAND〉。
そして、今週末からはスケートライン〈NEPENTHES SB〉x〈VANS〉が発売と、注目を集めるキラーアイテムが相次いでリリース。詳細は当ウェブサイトをご刮目ください。

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TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。