伝言アリ
再び、本の話。『HUNT』編集部の鈴木さんから、田渕義雄さんの新刊『森からの伝言』を頂いた。抜群に面白くて、一日で読んでしまった。田渕さんは作家であり、園芸家であり、薪ストーブ研究家であり、家具作家であり、養蜂家だ。ご本人曰く、自給自足的、山暮らし屋。『HUNT』での連載をまとめたこの本には、そのエネルギー論、園芸論、養蜂論が分かりやすく綴られている。田渕さんの住まいは日本一標高の高い村にある。そこで30年以上暮らしている。人生をかけて自らの哲学を実践し続け、その”生き方”自体が社会へのメッセージとなっている。そういう人の言葉は信用した方がいい。
籠城をきめこむのではなく、こうやって人生のエッセンスを伝えてくれるのが嬉しい。寒山で充実した日々を送ることが、結果として、終焉的な資本主義社会に風穴を開けることへもつながっていく。真のヒッピー。いや、真のパンクだ。田渕さんと同じようには生きずとも、その哲学を共有できる人は多いはず。自分もその一人。「他人の視線の中に自分を置こうとするな。」、いつでもどこでもSNSに夢中な人たちを見て、本の中にあった言葉が蘇る。森からの伝言は とても刺激的だ。
「 自然生活してれば、エコノミーとエコロジーは同じ意味だということがわかる。自然の経済学に反する経済活動は愚かだ。まだ弱肉強食適者生存ですか? ”棲み分け”が、自然界の普遍的真実。進化の反対語は退化? 退化を”退行的進化”と捉える想像力が、いま問われている。
もっと遠くへ・・・。もっと孤立無援に。もっと不便に。もっとシンプルに。もっと自給自足で。
もっと貧乏に。もっと無名に。
そして、もっと豊かに。」
(「 」内、『森からの伝言』P280より抜粋)
発売中の『HUNT』vol.17では、ちょうど田渕さんの連載の次ページから、NEPENTHESのインテリアについての特集を掲載して頂いた。こういう切り口の取材は初めて受けました。
ぜひ、ご一読ください。