なんて日だ/前編

直前にトラブルがあって実は危うかった札幌撮影が無事終わり、現像とレイアウトも即日に済ませて、ほっと一安心しつつ、気持ち良く飲んで寝た夜中、激しい揺れで目が覚めた。そう。つまり、北海道で地震があったとき、たまたま札幌にいたのだ。

ベットにしがみつき、瞬時にやばいと感じつつも、このビルが倒れることはないだろうと思い直し、揺れが終わるのを待った。手探りで携帯を探すも枕元にない。そうだ、電池が切れそうで充電してたんだったと暗闇の中デスクへ歩き、”ゆれくる”を開いて仰天。こりゃやばい。隣の部屋の清水さんが気になるが、結局この時間やれることはないと結論。余震に注意しつつ、朝を待とうとウトウトしていたらノックが。ホテルどころか街中停電で、空港も閉鎖だと知らされ茫然自失。とりあえずSOUTH2 WEST8で作戦会議をすることに。

寝る前に荷物をまとめておいて良かった。顔を洗おうと思っても水が出ない。とりあえず服を着て店へ。健人と要さんもやってきて、当日の閉店を決め、まずは買い出し。トレランガールの鵜野も店が心配で家から走ってやってきた。よりによって東京へ戻る朝に、清水さんと一緒に地震にあってしまうとは、人生何があるか分からない。報道を見ていると、どうやら旭川空港は動いているらしいという情報から、旭川発のチケットを取り直し、旭川空港から帰ることに決定。エアチケットをキャンセル待ちしつつ、いつものSOUTH2号に清水さんと乗り込み、久々の二人旅。SOUTH2 WEST8の由来である「南2西8」の標識を見上げると、信号には当然光が無く不気味だ。

ノンストップでひたすら走り続け、暗くなる頃に旭川に到着。馴染みのはずの街も真っ暗闇で、まるで知らない街のよう。不運にもその頃、旭川発のチケットが取れなかったことが確定。逆に元々の札幌発の振替え便なら翌日に取れるということが分かり、翌日札幌へトンボ帰りする決断をしたのだった。
旭川も当然ホテルは空きが無く、とある空家スペースに寝具を敷いて寝た。その夜の闇は真に漆黒だった。筆舌に尽くしがたいっていうのは、あの星空のようなものを言うんだろう。大停電がこれまでの北海道の歴史にないのであれば、原始の時代と変わらない星空を見れた唯一の日だったのかもしれない。P.M.A.! ©bad brainsこういう時こそ必要なのは、ポジティブ メンタル アティチュード。

つづく

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TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。