日曜日から始まったロンドンでの暴動。ここまで広がるとは誰も思っていませんでした。昨夜もまた暴動があるかもしれないと噂されていましたが、結局1万6千人の警察を動員したにも関わらず何も起こらなかった。やっぱり警察が恐いのか、最初は勢いづいていた子供が、お腹がすいてお母さんのもとへ帰っていったみたいで何だか笑える。
一連の暴動騒ぎのきっかけは、警官に射殺された黒人男性の事件に納得がいかなかった友達やコミュニティーが、警察に対しての怒りを示すために起こしたものでした。その後に起こった暴動は、最初の暴動に託つけ調子にのった勉強も仕事もしない若者達が起こしたもの。中には8歳や12歳くらいの子供もいたとかで、何かにたいして怒っているとか、反対している訳ではない。その子供達のインタビューを聞いていても、情けないほどにバカバカしい応答にため息が出る。しかも彼らは自分達が起こした暴動によって国の予算が大幅な出費になるってことも、その皺寄せがまたどこかで自分達に戻ってくるということも、全く理解していないようで本当に情けない。自分で自分の首を絞めているだけだというのに。
去年から政権が13年ぶりに労働党から保守党に変わり、国の予算をカットするために公務員の大幅な解雇や、増税、学費値上げなどを実施しました。労働党の頃に比べると、労働者階級の人達にはいろんな面で厳しくなったことは事実。でも、過去の政権が労働階級の人たちに甘すぎたのだという見方も根強くありました。確かにイギリスでは、何かと理由をつけて働かないで、国の保護で生活をしている人が多いようにも感じます。母子家庭にはカウンシル_ハウジングといって国からマンションや生活費が保護される制度もあって、10代で子供を産む女の子が結果的に増加しています。逆に高額所得者の所得税は給料の40%。過去に労働党が形成した国の形が、今になって裏面に出てしまったようです。
今回の暴動は全て労働者階級の街で起こりました。彼らが生まれて育った街。自分達が守るべきコミュニティーを、自らの手で破壊してるという事実を理解できていない彼らに国民は呆れかえっている状態です。破壊されたショップを経営している人達の殆どは、毎日一生懸命働いて家族を養っている人ばかり。そしてその人達は彼らの家族でもあり、同じコミュニティーで一緒に生きている人達。
それに気付かずに、火をつけたり、ショップウィンドウを壊したり、物を盗んだり、何故そんな事が出来るのか、しかも暴動の理由が曖昧で遊び感覚だったのが非人間的すぎる。_今朝のラジオでデーヴィッドキャメロンが、この暴動に参加した人でカウンシル・ハウジングに住んでいる人は、その家からの立ち退きを要求することも検討していると宣言しました。もしかしたらあり得るかなと思っていた事が、もう議会で検討されていた。報道によると、今日までで警察に出頭した子の中で一番若かったのは、なんと11歳の男の子。日本で小学校5年生!そんな小さな子供が、暴動に参加するなんて..。でも、これだけダメージを与えたのだから、年齢が若かろうがそれなりの罰は受けるのも当然だろう。
月曜日の朝に新聞で最初の暴動を知って、その日の夕方に友達から「今ハックニーで暴動、家に帰らない方がいいよ!」というメッセージが届いた。会社でテレビをつけると、本当に家の前で暴動が起きている。なんだか信じられなかった。毎朝歩く道、家の下のお店、いつも行く前のパブ、いつも薬をもらう薬局に、たくさんの若者がバットでガラスを割ろうとしている。不思議な光景でした。
でも結果的には、地元ハックニーでの暴動は他の地域に比べると被害は少なくて規模も小さかったからまだ良かった。だけどその日は、最寄りの駅も通りもすべて閉鎖されていたため、家に帰ろうとしても手前の駅から歩いて帰らないとならず、帰宅は諦めて友達の家に泊まりました。その友達とツイッターとテレビで常に情報をアップデートしながら、家に放火だけはしないでくれと祈る夜でした。この事件がこれからのイギリスにどのように影響するのか、注目していきたいです。
宮迫 亜矢 AYA MIYASAKO
1998年渡英。
ロンドンを拠点にフットワーク軽く世界を飛び回り、ホーム&
アクセサリー
デザインの分野でディレクター、コーディネーターとして活躍中。京都出身。