この春、 神宮前にリニューアルオープンした新生ENGINEERED GARMENTS TOKYO。
グレーに統一されたビル一棟は一際目を引く存在でありながら、 実は1988年にNEPENTHESが創業した場所であることでも静かな注目を集めています。 そんな新しい空間で、 NYから来日したENGINEERED GARMENTSディレクター宮本健太とデザイナー小田木邦匡にインタビュー。
二人が語る新店舗に込めた想いや、 最新コレクションの背景とは
グレートーンで統一されたENGINEERED GARMENTS(以下 EG)の新店舗は、 これまでの店とはまた一味違ったクリーンな印象の空間です。 こだわりのポイントなど教えてください。
新店舗はインダストリアルなテイストをベースに、 NYのダウンタウンに存在するギャラリーのような雰囲気が再現された空間になっています。 無機質な雰囲気で、 服を作品のように際立たせたいと考えました。 神宮前にいながら、 どこかNYを感じさせるアーティーな雰囲気が気に入っています。 EGのコレクションはもちろんですが、 繋がりのあるアートや写真などの展示も絡めながら、 この空間を使ってオーディエンスの皆さんに世界観を伝えていけたらと思います。
シンプルでとても良い空間に仕上がったと思います。 大きな窓からたっぷり光が入り、 開放感があるのも魅力です。 すでにEGを知ってくれている方はもちろん、 まだ知らない方々にも、 ここで実際の服を手に取って見ていただき、 何かを感じ、 共感してもらえたら嬉しいです。 この空間は、 これまでのEGの世界観はもちろん、 新しい方向性も全面に打ち出せる場だと思うので、 これからはこの場所を起点として積極的にアピールしていきたいと考えています。
EGのコレクションは、 宮本さんと小田木さんの二人体制で制作されていますが、 それぞれどのような役割でクリエーションを進めているのでしょうか?
まず私がコレクションにおける全体的な世界観をディレクションし、 小田木と共に一つひとつのアイテムを練り上げていきます。 この作業と並行して、 EGではおよそ70~90種類の生地を使用するため、 それらの選別や手配も同時に進めていく形です。 サンプル作成の初期段階から、 シーズンビジュアルについても完成図をある程度イメージし、 明確なビジョンを持って全ての制作フローを構築していきます。 型数が多いブランドですので、 シーズンテーマという大きな絵を完成させるために、 パズルを一つずつ嵌めていくような作業を2~3ヶ月ほど続けていくイメージですね。
宮本がシーズンのテーマや素材、 コレクション全体の流れを考えることが多くて、 私自身はシルエットやパターン、 ディテールといった服づくりの部分を整理しながら、 デザインを組み立てています。 ただ、 基本的には二人で対話を重ねながらコレクションを作っていて、 実際にはサンプル・画像・資料などを見ながらその都度コミュニケーションをとっているので、 明確に分業しているというよりは、 二人で少しずつ調整しながら形にしていく感覚に近いと思います。 最終的には、 その対話のプロセス自体がコレクションの個性につながっている気がします。
ブランド創設者である鈴木大器さんからブランドを引き継いで2シーズン目となりました。 改めて、 ブランドを継承していくことについて、 どのように感じているか教えてください。
大器さんがディレクションしていたEGでは、 大器さんのパーソナリティが存分に表現されていたと思います。 この事は身近で長年仕事を経験させていただいたなかで強く感じていたものでした。 私が大器さんの元で学んだ大切な部分の一つですが、 ものづくりをする上では、 簡単なように見えて実は一番難しいことであるとも感じています。 ある程度決まった枠組みの中に自分自身を投影し、 表現しながら、 オーディエンスの方々にも伝えていくという作業を、 これからも模索しながら続けていきたいと思っています。
ブランドを引き継ぐということに関しては、 無論プレッシャーはあります。 ただ、 長く積み重ねられてきたアーカイブや考え方がすでにEGの中にしっかりあるので、 それをどう今の感覚で解釈していくかという部分に面白さも感じています。 個人的には、 シルエットやディテールなどプロダクトの部分を整理しながら、 これまでの文脈を大切にしつつ、 少しずつアップデートしていくことを意識しています。 急激に変えるというよりは、 EGが持っている空気感を保ちながら自然に進化していくような形が理想だと思っています。
PAINTER PANT ¥52,800
今シーズンのEGでは、 白黒のカラーリングがとても印象的でした。 コレクションのテーマやコンセプトについて教えてください。
今までのEGコレクションと比べると、 少し特殊な内容になっていると思います。 コレクション作成前のミーティングであがった ”SKA MUSIC” というテーマを掘り下げて、 SKAのモチーフでもある 「白黒」 というコンセプトに辿り着いたんです。 ”SKA MUSIC” というテーマは以前から頭のなかにあり、 スタイルのあるカルチャーだと感じていました。 春夏コレクションということもあって、 それをEGで昇華させるには面白いかもと思ったんです。 最終的には、 自分でもここまでになるとは考えていませんでしたが (笑)、 結果としてコレクション全体の半分以上のアイテムを、 白と黒で表現していくという思い切った方向性にしました。 今回のコレクション制作から学んだことはとても多く、 単純に 「白黒」 と言っても、 生地のなかには無数の白と黒が存在し、 全体のバランスを考えながらそれを選別していく作業は思っていた以上に難しく、 時間を要しました。 単純な色目だけに、 生地バリエーションに奥行きを持たせたり、 それらをアイテムに落とし込んでいく作業は楽しくもあり、 とてもチャレンジングでした。 コレクション自体の仕上がりは、 今までのEGの世界観を再構築した新しい世界を感じられるコレクションになったと思います。
PAINTER PANT ¥52,800
白と黒のコントラストや、 少しクラッシックでありながらどこか自由な空気感というのは、 EGがこれまでに大切にしてきた感覚ともどこか通じる部分があると思っています。 そういう意味では、 SKAをそのまま引用するというより、 その空気感やリズムのようなものを服の中でどう表現できるか、 ということを意識しながらコレクションを組み立てていきました。 モノトーンをベースにしているので、 色数を抑えた分、 素材の表情や質感がより際立つよう意識しました。 トロピカルウールは軽く通気性があり、 春夏に最適で、 落ち着いた印象ながらシルエット次第で軽さも出せます。 インド生地は、 独特の織りや風合いがあり、 モノトーンの中でも柔らかく奥行きのある空気感を作ってくれます。 クロシェのような軽く涼しげな素材は、 これまでEGであまり使ってこなかった分、 新鮮な抜け感を加えています。 カスタムのリップストップチェッカー生地は、 SKAを意識したツートーンの視覚的モチーフとして全体のアクセントになり、 リネンブレンドは軽やかで肌触りも柔らかく、 春夏らしい着心地を補強してくれます。 加えて、 ニットやジャージ素材も柔らかさを活かして動きやすさやリラックス感をプラスしました。 制作の過程では、 同じ白黒でも生地の質感や厚みで見え方が大きく変わることに改めて気づき、 サンプルを重ねながら微妙な組み合わせを調節していく作業がとても面白くもあり、 同時にチャレンジングでした。 限られた色の中で、 多数な素材の違いや質感の重なりを楽しんでもらえる構成にしているので、 こうした細かいバランスや素材選びにも注目してもらえると嬉しいです。
CLAIGTON JACKET ¥64,900
REFEREE JACKET ¥82,500
CLAIGTON JACKET ¥64,900
それぞれが気に入っているアイテムについて教えてください。
個人的にはオリジナルデザインのチェッカーパターンで制作したリップストップ生地のPAINTER PANTが気に入っています。 綿100%のリップストップはEGでのクラシックな生地の一つで、 元々のチェックに同じチェック柄をプリントする工程もEGならではだと思います。 ペインターパンツは私自身のNY生活での定番であり、 ほぼ毎日履いているアイテムなので、 この一着は思い入れが強いですね。
個人的に気に入っているのは、 まずClaigton JacketのWhite/Black Checker Printです。 丈は短めでライニングがなく、 2wayジッパーに加えてスナップボタンでも開閉できるため、 さまざまな着こなしのバリエーションが楽しめます。 シンプルながら春夏にぴったりの軽やかなアウターで、 気楽に羽織れるのが魅力です。 それと、 Referee JacketのGrey Micro Houndstooth Tropical Wool。 新作のアウターですが、 今季のテーマに沿ったカジュアルな雰囲気で、 気軽に着られる一方、 肩のリブパネルなどのディテールがさりげなくアクセントになっています。 ボンバー·レフリータイプのデザインで、 機能性とスタイルのバランスが良く、 日常でも着やすいアウターだと思います。
REFEREE JACKET ¥82,500
最後に、 それぞれ今何か気になっていることや、 夢中になっていることがあれば教えてください。
最近は本屋さんを回ることが生活の楽しみの一つですね。 NYの面白いところって、 アンダーグラウンドでの流行を小さい街の中で体験できることなんじゃないかと思います。 残念ながら面白い服屋は少なくなっている気がするのですが、 レストランやギャラリーなどでは、 インデペンデントで面白いことをやっている店が今も出てきていて、 そういった場所からアイデアや刺激をもらうことが多いですね。 その中でも個人的にアートブックの展開に注目しています。 それぞれキューレーションに個性があり、 SNS時代では体感できない、 本ならではの面白みを感じたりしています。 私自身、 選ぶ本の種類もバラバラで、 その都度出会ったものを先入観なく選ぶようにしています。
最近は特に大きな変化はなくて、 日々の小さな出来事や、 自分の興味に向き合う時間を楽しんでいます。 以前から変わらず、 古着屋やスリフトショップに行くのが好きで、 そこで偶然出会うアイテムやディテールが、 ふとしたインスピレーションにつながることが多く、 今でも大切な時間になっています。 また、 アウトドア関連のアイテムにも惹かれていて、 ブランドにこだわらず、 実際に着たり使ったりしながら試すことを楽しんでいます。 デザインとしての魅力はもちろんですが、 それ以上に、 機能性が日常にどう溶け込むかを考えるプロセスに面白さを感じています。 そして、 サッカーは昔から続けている大切な習慣であり、 今も特に夢中になっていることの一つです。 体を動かすことで得られるリズムや感覚、 瞬間的な判断や流れの中でのバランス感覚は、 自分の中でデザインにも通じていると感じています。 街を歩いていて目に入るものも小さなヒントになり、 そうした日常の感覚と、 サッカーから得られる身体的な感覚が重なりながら、 次のコレクションのアイデアにつながっていくんです。
KENTA MIYAMOTO
/ 宮本健太
1982年 広島県生まれ。 2002年NYへ渡米、 2011年ネペンテス アメリカ入社。 AIE の Designerを経て、 2025年にENGINEERED GARMENTS のDirectorに就任。
KUNIMASA ODAGI
/ 小田木邦匡
1979年 静岡県生まれ。 2000年にカナダへ移住。 2006年よりNYを拠点に活動。 2011年WP Lavori in Corsoにて複数ブランドを担当後、 2023年ネペンテスアメリカ入社。 2025年ENGINEERED GARMENTSのDesignerに就任。
ENGINEERED GARMENTS TOKYO
営業時間:11:30 〜 20:00
東京都渋谷区神宮前5-45-12
TEL 03-6419-1798
egtokyo@nepenthes.co.jp