朝にでも、昼寝からでも、むくりと突然に起き上がるのだ。
目はしっかり開いている。
スイッチを入れたてのコンピューターのような、
次の瞬間を待つ無の状態。
この時の顔がずいぶん大人びていて、
いつもドキッとするのだった。
でもそれも一瞬のこと。
時間というのは尊いなあと思うわけの一つ。
男の子はすぐに離れて歩くようになるわよ、と四人の子を持つ先輩に言われてから、
実はずっとそわそわしている。
勿論いつまでもべたべたしているのも気持ち悪いし、
いつかはその時がやってくるのだろう。
ある人は自分の誕生日にだけすっかり育った息子たちとハグするそうだ。
大きな息子たちは半分嫌々ながらも抱きしめてくれると、嬉しそうに彼女は話した。
それいいなあ、いつか離れて歩くようになった時にはお願いしてみよう。
眠った顔に鼻をこすりつけると、
石けんの甘いにおい。
寝ていてもくすぐったそうにぷいとむこうを向かれてしまう。
それでもしつこくにおいを鼻の奥に吸い込んで、
今この時を記憶に刻むのに私は必死なのだった。