スタイリストアシスタント時代を共にした林くんというスタイリストがいる。
とにかくよく喋るしよく飲むし気持ちのよい九州男児だ。
彼が面白くない時は三日酔いの時くらいで、
たいていはムードメーカーとなって場をたいそう盛り上げてくれる。
アシスタント時代からまあ気が合う方で、よく一緒に飲み歩いていた。
息子が生まれてから外で飲むことがめっきり少なくなって、
誘いを断ることが増えると声をかける方からすれば当然誘いづらくなるわけで、
かつての飲み仲間たちとはもうすっかり疎遠になっているのだけれど、
林くんとは共通の友人が多いこともあってか今も時々飲んでいる。
ところで私はほとんどテレビを見ない。
そして林くんもテレビはDVD再生用としてしか使っておらず、
映画はよく見るが地上派の番組は全く見ないらしい。
そんな彼に教えてもらった面白いテレビ番組がある。
BSスカパーのBAZOOKAというバラエティ番組。
私が小藪千豊のファンだと言ったら教えてくれたのだ。
You tubeに過去の放送がいくつもアップされていて、見るのは簡単だった。
取り扱う題材は地上派では絶対に放送できないであろうものがほとんどで、
かなり過激だったり、どうしてそんな企画を思いついたのかというくらい奇抜だったりして確かに面白かった。
その中でも高校生ラップ選手権は特別だった。
ラップに自信を持つ高校生ラッパーたちが集まってフリースタイルのラップで出来の良さを競う。
登場する高校生たちの個性が豊かで、
いわゆる札付きの不良、進学校の優等生、自称ネットオタク、
自閉症で引きこもりしていた子、など様々なのだけれど、
それぞれのラップへの情熱の深さにはつい涙してしまうほどだ。
彼らが自ら生き甲斐を見つけ、それを掘り下げ、
うまくなろうと努力する姿は驚くほど美しかった。
そんな高校生たちの憧れの的のラッパーで戦いの審査員も努めるジブラさんや、
番組の進行をしている小藪さんのまとめ方も流石で、
テレビのバラエティも捨てたものじゃないな、と思ってしまう。
(なんとDVDも発売されているらしい。ちょっと欲しい。)
高校野球や箱根駅伝を見ている感覚にどこか似ているような。
我が息子も彼らくらいの年頃になった時、
そんな風にひたむきに打ち込む何かに出合っているといいなあ、と
高校生たちのラップを聴きながら強く思った。