煙草は吸わない。今は。
実を言うと学生時代はヘビースモーカーだった。
ハイライトなんかも吸っていたし、シガーも好きだった。
吸い始めたきっかけは映画の中で女優が煙草をくゆらす姿に憧れてとかそんなありふれたことだったと思う。学生時代は何かもう今になればあなたやめなさいよと言いたいくらい格好つけていたなあと恥ずかしく、そして懐かしい。スタイリストのアシスタントをはじめてからはその激務により吸う本数が減り、
(勤務中は吸わなかったので)朝と晩の2本だけ。
そして私はある日風邪をひく。
その時吸った煙草の不味さは今でも忘れられない。
ひどい味に目眩と吐き気。
そのまま長引いた風邪により思わぬ流れで禁煙は成功した。
タスポなるシステムの導入も同じ頃だったと思う。
簡単な手続きが何だか面倒で登録せず、それで買うのをやめた。
お酒の席でもらい煙草をすることもあったけれどそれもしばらくすると煙草税がずいぶんあがって、
さすがにもらうのが心苦しくなってきた頃、妊娠がわかり(肌の老化がものすごいスピードで進むよとエステティシャンを目指す知人に言われたのも頭のどこかで気にはなっていたし)きっぱりすっぱり煙草とさようならをしたのだった。煙草を吸う女は嫌いだという男性は意外と多いし確かに可愛くはないかもしれない。でも私は煙草を吸う女って自分が吸わなくなった今もちょっと好きなのだ。
例えばマレーネ・ディートリッヒやアリス・プランみたいに、なんて言ってもそんな女なかなかいないけれど。この間一緒に食事をした私より少し年上の女性が黒いポーチから煙草を出してシュポッと火をつけた様は素敵だったなあと思い出す。そういうポーチやライターが気の利いたものだったりするだけで煙草を吸う女のレベルがぐんとあがる気もする。彼女の黒いポーチにはゴールドで
「GIRLIE STUFF」と記されていた。そこから出てきたのが煙草というのも洒落ている。そういえば少し前に撮影用に借りたデュポンのライターは開けるとティンッと長く響く良い音がした。
素敵。