魚の目というのはいったいどこを見ているのかわからない。
あんなに透き通っているのにつかみどころがない。
「つかみどころがない」
そんな事象に惹かれることがある。
時々そんな人にも出会ったりして、
何を考えているのかわからず
どうしてあの時あんなことを言ったのか、とか
あの表情には何の意味があったのだろう、とか
気がつくとその人のことをずっと考えていたりする。
昔見た夢を思い出した。
大雨が降っている。
雨はくる日もくる日も降り止まず
都市を飲み込むほどの雨量に人間たちは太刀打ちする術もなく、
海と陸は境を持たなくなる。
そして誰もいなくなった水中の都市。
ビルの上層階の窓を横目に私は泳ぐ。
立体になっている首都高速のあたりは美しかった。
雨は止んだのか太陽の光はどこからか届いているようで
魚たちがうろこを光らせながら泳いでいる。
何を見ているのか、考えているのか、わからない目をして。