今夜は風もひんやりで、ビルの赤いライトの点滅もうるさくない。
枯れかけていたけれど、なぜだかその生きようかどうしようか迷っている風な様に惹かれ、とても安く買ったコウモリランに毎日一言話しかけ丁寧に水をやっていたら、いつしか元気を取り戻してどっしりと窓際に落ち着いているが、彼も気持ちが良さそうだ。
その南側の大きな窓には日がのぼり、沈む。そしてまたのぼる。
雨の日もある。雷。花火。入道雲。朝焼け。年明け頃の雪。
この家に住むことを決めたのもその景色が大きな理由だったと思う。
誰かにとっては何でも無いことかもしれないけれど大きな窓の映す色々は、生きることのどうしようもない退屈や、重圧をふと軽くしてくれるようで。
家々の明かりはまばらで、それもそのはず、夜は深い。この時間に起きている人がいることが励ましになったりもする。
乾燥中のバスタオルがまわる音の合間に聞こえる、歌うような息子の寝息は高くて、いつかまったくの低い声で話す日がくるのかと思うと何故かしらん、今彼を抱きしめずにいられないパンツ一丁、濡れたぼさぼさの髪をした私。
真夜中の窓にはそんな私が映っていた。
今日の帰り道のBGM
紅い花/ちあきなおみ