【作品解説】
居酒屋探訪家の太田和彦が、昼は地方を中心に古き良き街並みや古刹を散策。夜は地域に根付いた“上質な居酒屋”を厳選して訪問し、太田流の酒飲みの作法なども交えながら店主こだわりの料理や銘酒をじっくりと紹介する人気テレビ・シリーズ。
居酒屋探訪家の太田和彦が、昼は地方を中心に古き良き街並みや古刹を散策。夜は地域に根付いた“上質な居酒屋”を厳選して訪問し、太田流の酒飲みの作法なども交えながら店主こだわりの料理や銘酒をじっくりと紹介する人気テレビ・シリーズ。
大好きな居酒屋へまったく行けなくなってしまったので、せめて気分だけでも楽しみたくて、晩酌しながらよく観ていたのがこの番組。太田さんの穏やかで温かみのある語り口を聞いていると、ふらりと立ち寄った酒場で店主と常連客の会話に聞き耳を立てながらひとり静かにグラスを傾けているような感覚を、自宅にいながらにして味わうことができました。そして、やはり居酒屋はいいなぁ、また早く行きたいなぁ、とつくづく思いました。
ブルックリンの小さな銀行に押し入った2人組の強盗は、杜撰な計画のせいで警官隊に現場を取り囲まれてしまい、人質を取って銀行に籠城するという最悪の選択肢を選ばざるを得なくなる。果たして、事件はいかなる結末を迎えるのか 。1972年8月に発生した実際の強盗事件を題材にした、名匠シドニー・ルメット監督による傑作クライム・ムービー。
こんなにもずっと自宅にいることはこれまでの人生で一度もなかったので、この機会を利用して、アメリカン・ニューシネマを改めてじっくりと観直しました。『俺たちに明日はない』『イージー・ライダー』など代表的な作品のほとんどを鑑賞しましたが、この時代の映画はやはり理屈抜きに良いですね。特に『狼たちの午後』『スケアクロウ』『セルピコ』で主演を務めた若き日のアル・パチーノは、演技の素晴らしさはもちろんのこと、そのファッションも抜群にカッコ良かったです。
セレブや歴代大統領と交流を持つ一方で、富と権力を振りかざし、長年に渡って未成年女性に対する性的暴行や人身売買を行っていたアメリカ人の大富豪ジェフリー・エプスタイン。2019年に逮捕されるも拘置所で謎の死を遂げた彼の恐るべき実態を、被害者たちの生々しい証言とともに検証する衝撃のドキュメンタリー・シリーズ。
事件自体は当時のニュースで見聞きしていましたが、詳細な内容までは知らなかったので興味を持ちました。本人の歪んだ嗜好や行為のグロテスクさもさることながら、それ以上に自分が街を、法を思い通りにコントロールできると考える金持ちの感覚のヤバさに震えました。おそらく彼は、自分が犯した罪を最後まで自覚してなかったのではないでしょうか。全4話を見終えた後には怒り、呆れ、恐怖、嫌悪、その全てが入り混じった複雑な感情がこみ上げてきましたが、それは同時に、諦めに近いものでもありました。アメリカは病んでいるな、と。
ベトナム戦争から約半世紀。ともに戦った4人のアフリカ系退役軍人が、戦死した仲間の亡骸と埋蔵金を探すために再びベトナムを訪れる。かつての戦場であるジャングルへと足を踏み入れた彼らは、やがて消えることのない当時の過酷な記憶、そして今もなお現地の人々を苦しめる戦争の災禍と向き合うこととなる。スパイク・リー監督最新作。
『モ’・ベター・ブルース』や『ジャングル・フィーバー』などスパイク・リーの映画に大きな影響を受けてきた世代なので、この最新作も配信が開始されてすぐに鑑賞しました。事前に昨今のBlack Lives Matterムーブメントにも繋がる内容だと聞いていましたが、個人的に印象に残った(そして、少し引っかかった)のは、むしろ作品の主題ではない「金に対する人間の執着」でした。また、劇中では数々のソウル・ミュージックの名曲が使用されており、なかでもマーヴィン・ゲイの名盤『What’s Going On』の収録曲の使われ方が最高です。
1970年代後半のイギリスを舞台に、当時蔓延していた人種差別に立ち向かった社会運動「ロック・アゲインスト・レイシズム(通称、RAR)」。雑誌の自費出版に始まり、やがてTHE CLASHなどのミュージシャンと結び付いて巨大なデモ行進と音楽フェスへと発展していった当時の若者たちの戦いに迫る音楽ドキュメンタリー映画。
上映劇場の休館に伴う期間限定のレンタル配信で鑑賞しました。ドキュメンタリー映画『ルード・ボーイ』でも観たことのあるシーンでしたが、ロンドンのヴィクトリア・パークで演奏されるTHE CLASHの「White Riot(白い暴動)」がやはり圧巻。SHAM69のジミー・パーシーを迎えたエネルギッシュなパフォーマンスと約10万人の観客の熱気が大きなうねりとなっていく様は、何度観ても鳥肌モノです。時代は変われど、今もなお世界中で起こっている人種差別という問題について考える上でも、このタイミングで観てよかった素晴らしい作品でした。
ムービーカメラの発明から100年あまり、映像は20世紀をいかに記録してきたのか 。世界30カ国以上のアーカイブスから収集した貴重な映像や回想録、証言などをもとに20世紀を振り返った『映像の世紀』の新旧シリーズを合体し、新たな発掘映像を加えてテーマ別に再編集した歴史ドキュメンタリー番組のスピンオフ作品。
90年代後半に放送された『映像の世紀』も衝撃的な内容でしたが、その再編集版である本シリーズは、さらに鮮明に生まれ変わった数々の歴史映像に目が釘付けになりました。当時の世界中の人々がまとう衣類も見所のひとつで、洋服のデザインを考える際の参考資料としても、とても価値のある作品だと思います。なお、2016年に放送された『新・映像の世紀』の最終回には「あなたのワンカットが世界を変える」というタイトルが付けられていましたが、今回の新型コロナウイルスのパンデミックやBlack Lives Matterムーブメントをきっかけに、そんな新しい映像の時代の到来を改めて実感した次第です。
日本最大の峡谷、黒部川の上流に、登山家たちから“桃源郷”と呼ばれる湿原がある。その名は「薬師見平」。しかし、たどり着くには、急流をさかのぼり、道なき山に分け入らなければならない。山岳ガイドの多賀谷治さんとNHK取材班は、雲上の桃源郷を目にすることができるのか。夏の北アルプスを舞台に、静かな山の旅が始まる。
NHK「奇跡の絶景」シリーズから北アルプスをテーマにしたものを選んで視聴。立山、穂高岳、劔岳、どれも素晴らしかった中で、特に印象に残っているのがこの一本。下流では桜鱒、上流では岩魚が泳ぐ、キラキラしたターコイズブルーの黒部川源流部に溜息をつき、60L以上のザックを背負って激流を遡り、道なき急斜面を這い上がる取材班と山岳ガイドのタフネスに圧倒されました。ガイドの名は多賀谷治さん。調べてみたら、様々な作品でガイドやスタントをやっていらっしゃる。山での身のこなしが格好良くて、とても刺激を受けました。
宝石商のハワード・ラトナーは、ギャンブル中毒により多額の借金を抱えていた。借金取りの用心棒からも監視される状況の中、ある日、ハワードはブラック・オパールを手に入れたことによって、一攫千金を狙った一世一代の賭けに出る。アダム・サンドラーがキャリア史上屈指の名演を見せるクライム映画。
「きっとアドレナリン全開になるよ」と友達から薦められて、ずっと家にこもりっぱなしだし、たまには心臓ドキドキの2時間を過ごしてもいいかなと思ってセレクトしました。言われた通り、本当に最初から手に汗握りっぱなしで、特にラスト20分の展開は出色の出来! 劇中で賭けの対象になるバスケットボールの試合は、実際のNBAボストン・セルティックスの映像が使われていると後になって知りましたが、映画を観ながらあんなにもスポーツチームを応援したのは初めてです(笑)。ギャンブルに取り憑かれた男たちの光と影。強烈でした。
10日後に結婚式を控えた直子は、かつての恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。荷物の中から直子が取り出した一冊のアルバムには、一糸纏わぬ若き日の二人の姿が映し出されていた。「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」直子の婚約者が戻るまでの5日間、濃密な情事に溺れていく二人が辿り着いた先は 。直木賞作家・白石一文が男と女の極限の愛を描いた同名小説を、柄本佑と瀧内公美の共演で実写映画化。
自粛期間中、友人たちと最近観た映画の話をした際に「とにかく凄かった!!」と3人から同時に薦められたのが、この作品でした。冒頭、瀧内公美さん演じる直子が片手で自身のベルトを外し、デニムを脱ぐシーンがあるのですが、革のメッシュベルトが伸びてしまい、脱ぐのに苦戦します。ピンが外れた瞬間、見事なスピードでパンツが落ちるところから一気に作品の世界に引き込まれ、そのままエンディングまで一瞬たりとも目が離せませんでした。特に印象的だったのが、食事のシーン。口の中に物を入れたまま喋る姿が魅力的に見える女性もいるんだな、とその都度、直子に見惚れていました。
自ら“教授”と名乗る謎の人物が、男女8人の犯罪のプロを集め、スペイン王立造幣局を狙う前代未聞の強盗計画を決行する。しかし、完璧なはずだった計画に綻びが生じ、やがて強盗団たちは崖っぷちの状況へと追い込まれていく 。世界中で大ヒットを記録したスペイン発のクライムサスペンスドラマ。
ストーリー自体は造幣局に立てこもって現金を強奪するという至ってシンプルなものなのですが、強盗団のメンバーの個性が強く、また途中からそれぞれの生い立ちなども明らかになっていくため、自分の好きな人物、いわゆる推しメンができ、物語が進むもつれてどんどん感情移入していきました(自分の推しは“教授”と“ベルリン”)。ピンチのたびに繰り出される予想もつかない精巧な犯行計画や、一切中だるみしないテンポの良さからついつい先の展開が気になってしまい、この自粛期間中にパート1からパート4まで全31話をイッキ観しました。
ソウルのタクシー運転手マンソプは「大金を払う」という言葉に釣られ、ドイツ人記者ピーターを乗せて一路、光州を目指す。そこで軍による学生や市民への暴虐を目撃したピーターは、その事実を全世界に発信するべく、撮影記録を持ち帰ることを決意する 。1980年に発生した韓国現代史最大の悲劇とも言われる「光州事件」の知られざる真実を描いたヒューマンドラマ。
2019年に公開され、アカデミー賞作品賞を受賞したことでも話題になった『パラサイト 半地下の家族』を観てから韓国映画にハマりました。同作品で主演を務めていたソン・ガンホさんの出演作品は『シュリ』や『殺人の追憶』などどれもハズレなしでしたが、本作も抜群に面白かったです。緊張感あり、笑いあり、グッとくる仲間との絆ありで、最後は観た人すべてが感動するであろう素晴らしい一本でした。作品をより深く楽しむために、映画の背景となっている「光州事件」の史実や韓国の民主化運動について掘り下げてみるのもオススメです。
刑事事件の公選弁護人を主な業務とする冴えない貧乏弁護士ジミー・マッギルは、いかにして犯罪まがいの仕事もいとわない悪徳弁護士へと変貌を遂げていったのか? 伝説のドラマ・シリーズ『ブレイキング・バッド』に登場する犯罪弁護士ソウル・グッドマンの若き日を描くスピンオフ作品。
もともと『ブレイキング・バッド』(傑作!)の大ファンだったこともあり、本作もいつか必ず観たいと思っていました。主人公の貧乏弁護士ジミーだけでなく、周辺の登場人物も敵味方、善悪関係なく魅力的で、それぞれ抱えている背景を緻密に描きながら、伏線をきっちりと回収しつつ物語が進行していきます。この手の海外ドラマは最初こそ面白いけれど徐々にトーンダウンしていくものが多いなかで、本作はシーズンが進むごとにどんどん面白さを増していく、恐ろしく完成度の高い作品でした。いよいよ完結するシーズン6の日本での配信スタートが、今から楽しみで仕方ありません!
コカインはどのように世界へ広がっていったのか? 悪名高き麻薬王パブロ・エスコバルは、なぜ短期間で巨万の富を得ることができたのか? 1980年代のコロンビアでドラッグ・カルテルを創設した実在の人物パブロ・エスコバルと、アメリカン人麻薬捜査官の熾烈な戦いを描くクライム・サスペンス。
最初の数話だけ観て途中でストップしていたものを、自粛期間を利用して全30話を一気に完走しました。限りなく事実に近いストーリーとのことですが、凄惨なバイオレンス描写や効果的にインサートされる実際のニュース映像から一昔前のコロンビアでは人々がいかに死の恐怖と隣り合わせで生活していたのかが垣間見られ、見応えを感じると同時に愕然としました。また、パブロ役のヴァグネル・モウラの演技も本シリーズの見所の一つで、圧倒的なカリスマ性と時折見せる人間味の二面性には、正義と悪の判断を超えて多くの人が魅了されると思います。