Dead Stock – Old Town

デッドストック。
誰が使い出した言葉かわからないが、20数年前アメリカに来たばかりの頃は仕事でどこに行くにしても、田舎の小さい町に、もしかしたら昔のジーンズやスニーカーが眠っていないかなと、それらしいお店を見かけるとつい立ち寄って探りを入れてみたりしていたものだ。
見つけた事があるかって?
そうだなあ、長い間に相当数あたったけど何となく手応えのあったほど見つけたのは2回くらい。それも大した量ではなかった。大概の場合、先人が来てる事が多くて、その残りがちょっとあったかなという程度。そんなに美味い事は簡単にはいかないってことか。ま、僕の場合だけどね。それでも稀に何か見つけた瞬間は、まるでフライで魚を釣り上げた時のように興奮してアドレナリンが激高してしまう。ギャンブルというか、これはもう宝探しに近いかも知れない。

さて、シーズン毎に英国、マンチェスターから事務所に送られてくる雑誌で、Proper マガジンというのがある。これの今回の表紙が積み上げられた昔のアディダスの青い靴箱だった。一体何で?と思って紙面を繰ると、結構なページをさいた大特集記事がどーんと掲載されていて、それが何とアディダスをめぐる、デッドストックの旅に関して。

ざっと説明すると、とある友人がアルゼンチンのブエノスアイレスの外れにある古ぼけたアディダスの専門店をたまたま見つけてウィンドウの写真をマンチェスターのアディダス好きに送った事から全てが始まる。この手のマニアは、小さく写った写真の箱の品名からもモデルを推定してしまう。そこに大量の70年代、80年代のデッドストックがあることを確信。仲間と一緒に即決でアルゼンチンまでのデッドストックツアーを企画してしまう。何とも、今どきらしいのは、その一部始終を撮影も同時にしていて、完全にドキュメンタリーメイキング状態。

はたしてその、ブエノスアイレス郊外にアディダス専門店を70年代後半から経営しているカルロスさんは、御歳75歳。いろいろな事情があって10年ちょっと店を閉めていたのを再開。商品は自然と全てが10年超のデッドストック。マンチェスターから来たデッドストックハンターたちはその内容に2日間、狂気乱舞で、買いまくってしまう。写真や、撮影されたフィルムからも当人達がもの凄い興奮しているのが手に取るようにわかる。

今でもこんな事があるんだね。
印象に残ったのは、この店の主人。
皆が大喜びしているのに、彼は全く表情が変わらない。
それどころか、途中から買物を制限してしまう。
何だか彼にとっては、商品であるそのデッドストックはデッドストック以上のそれ以前の意味があるのかもしれない。物の価値観とか、そんなものをあらためて考えてしまった。

興味のある人のために。
こちらがデッドストックツアーの記事。マンチェスターの大御所ミュージシャン、元ストーン・ロゼスのイアン・ブラウンさんも参加している。彼は洋服好き、そしてスニーカー(英国ではトレイナーというらしい)オタクでも有名。
http://www.theguardian.com/fashion/2014/nov/02/adidas-hidden-hoard-in-argentina-ian-brown

そしてこちらが、デッドストックツアーのドキュメンタリー? 
ちゃんと撮影してるところが凄いっていうか、何か面白い。

さて、話はころっと変わるのだけれど、英国繋がりで、先日ちょっと良い事がありました。
まだアメリカに住んで間もない頃、ヨーロッパに行った事ないのかとバカにされたのをきっかけに初めてロンドンへ。英語はフランス語に聞こえるは、土地勘はないわで、大変だったけど、最高に気に入ってしまった。以来、しばらくはロンドンにはまり、この性格なので何ヶ月と空けずに頻繁に通う事に。何でもアメリカが最高だったものが、いきなりロンドンはもっとカッコ良いみたいな手のひら返し。特に好きだったのが、サウスケンジントンにあった、今で言うと若手のファッションのフリーマーケットみたいな「ハイパーハイパー」という場所。当時、ロンドンの若手デザイナーたちが皆、お金は無くとも情熱と努力だけで、お店というか、スタンドを作って集まっていました。NYとはまた全然違う、その熱さにやられて、いろいろな人と仲良くなる事ができた。僕も若かったからね。その中の何人かは本当に面白い洋服を作っていて、やっぱりそうなるとロンドンから日本のお店のために買い付けたり。中でも個人的に好きだったのが、「 Old Town 」というブランド。
http://www.old-town.co.uk/

クラシックなイギリス式のワークウェアがベースのデザインで、素材もキャンバスやモールスキン、コーデュロイなどで、一発で気に入ってしまった。頑張って日本に持ち込んだのだけど、やっぱり当時のうちの力ではちょっと限界もあったと思う。数年の付き合いから自然消滅してしまっていた。その彼が20年の時間を経て、どういう訳かいきなりNYのインフォメーションアドレスにEメールをくれた。簡単な自己紹介のあとに、昔に会った事を覚えているでしょうかと。いやあ、びっくりした。たまに清水さんと彼らの話をすることもあったけど、当然先方も完全に忘れていると思っていたからね。僕らがNYにお店をやってる事も知っていて、今回10年ぶりに訪NYするという。何回かのメールの後、僕らはNYで会う事になった。さすがに20年、相手の顔も不確かだし、それ以上に僕も歳をとって風貌が変わってしまってるから大丈夫だろうかと不安だらけ。そしてついに再会を果たす事ができた。ウィリーさんと奥さんのマリーさんは、見た瞬間直ぐに分かった。確かにお互いに歳をとったけれど、彼らは全然変わっていない。来ている洋服も、あの当時に来ていた感じのまま。少ない時間だったけれど、今までの経過や、昔話で盛り上がって本当に楽しかった。あらためて彼らのホームページを見てみると、びっくりするくらい変わっていない。彼らの好きなもの、良いと思うものは、この20数年の間、びくともせずにずっと同じだった。自分たちの町で、自分たちの好きな物を、自分たちだけで今も変わらず作り続けてる。こういうライフスタイルを実践している彼らは本当に素晴らしいと思うし、尊敬してしまう。いつかまた一緒に何かしてみたい。そんな事を今メールでやり取りしているところです。

長くなりましたが、本年最後のコラムアップです。
今年もたくさんの人に世話になりました。
来年もよろしくお願いします。

Happy Holidays!
よいお年を。

ではまた来年。 

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DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

DAIKI SUZUKI 鈴木 大器

NEPENTHES AMERICA INC.代表「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。08年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。