モフラージュ

〈SOUTH2 WEST8〉のメッシュシリーズが店頭に揃った。個人的にも毎シーズン買い足してるお気に入りで、アウトドアへ出るときにはこれがないとどうにもならない必需品。一番は虫除け。大袈裟ではなく、あるとないとじゃ天と地の差。おまけに低木との細かい接触も楽だし、適度な細かさのメッシュでフードを被っても視界が良好なのが良い。

カモフラージュ柄のプリントデザインも毎回秀逸で、今季リリースされた新柄はタイダイとレオパード。タイダイはオリーブをベースにしていてそのまま自然に馴染むし、レオパードは実際アフリカでカモフラージュ柄として採用されていたこともある柄だ。

ご覧のように街ではレイヤードの主役へと変貌。
着てみると分かるのだけど、肌にさらっと心地良いし、一枚着ているだけでなんとなく安心というか、薄手のカーディガンを着てるような感覚。下に着るものの色によって、柄の出方が変わってくるのも楽しい。是非、店頭でお試しを。

ちなみに〈SOUTH2 WEST8〉で人気のオレンジ色のカモフラージュ柄は、実際にクルーが通っている北海道の森の写真からデザインしたオリジナル柄で、SOUTH2 WEST8 CAMOと名付けられている(同素材のカーキも同様)。

カモフラージュと聞いて自分が思い出すのは、NEPENTHESが20年くらい前に日本に初めて紹介したあるブランド。自らボウガンを使ってハンティングをするハンターが、接近戦用に音が出ないフリース生地を使ってウェアを作っていた。ウェアはとても機能的で特徴のあるデザインも魅力で、うちはファッションの視点から日本へ紹介していた。

NYにいた頃、あるとき彼から写真が届いた。そこには横たわる巨大なキリンの横に誇らしげな本人らしき人物が写っていた。頭が混乱してしばらくその写真から目が離せなかった。しばらくして写真の裏にメッセージがあるのに気付いた。ボウガンで射ってライフルで仕留めた、これまでしてきた小さな狩りとは違うすごい体験だったと書かれていた。

混乱したのは嫌悪感からではなかった。もちろん彼はなんら法律は犯していない。ライセンスを取り、お金を払ってハンティングをしている。ただ、その大きなキリンへの畏怖の念で、脳が思考停止したのだ。ハンティングには殺生が付きもの。そこから逃げられない。その目的が単純に快楽の場合、そのターゲットの種類や大小に限らず、自分には向いてないと思った。

話を釣りに移そう。釣りもハンティングとさほど変わりはない。しかし、釣りにはキャッチアンドリリースという手段がある。ターゲットと知恵比べをして釣り上げた(キャッチ)後は、その魚を流れに戻し(リリース)、またの再会を願える。これは精神的にとても良い。魚の扱いやリリースの方法にも技術があって、そこに釣り人の美学が見え隠れする。

だったら釣りもしなければいいと言うかもしれないが、やっぱり狩猟本能は捨てられない。だからせめて命は取らず、自然に与える影響を抑えて、ローインパクトな行動を。そんな気分の令年初ノート。完。

TOKURO AOYAGI 青柳 徳郎

NEPENTHES ディレクター。 1970年生まれ。 東京都出身。