A human in the pitcher
  • 極端にデフォルメされた大きな瞳と長く伸びた手足。そんな独特なタッチで描かれる日本発のキャラクターが今、世界的な注目を集めていることをご存知だろうか。作者の名前は、田中かえ。2010年代前半からSNSやTumblrを中心に作品を発表している気鋭のイラストレーターだ。
    自身も美術学校の出身だった母親の影響で、幼少期から美術教室に通っていた彼女。ただ、中学校ではサッカー、高校ではバンド活動に夢中だったこともあり、描けば周囲から褒められはするものの、絵はずっと“なんとなく得意なこと”の域を出ることはなかったという。
  • 〈MEDICOM TOY〉から発売されたフィギュア/ A figurine made by MEDICOM TOY.
    〈MEDICOM TOY〉から発売されたフィギュア。「自分が描いたキャラクターのめちゃくちゃでかいソフビを作るのが、いくつかある今後の野望のひとつです」
  • 「なので、ちゃんと絵を描くようになったのは結構遅くて、高校2年とか3年の頃でした。当時好きだったバンドの相対性理論やアイドルグループのでんぱ組.incが作品のアートワークにイラストをよく使っていて、それが普通のアニメや漫画の絵に飽きていた自分にはとても刺激的で。ちょうど同じ頃にTwitterやInstagramを始めたり、デザフェス(デザインフェスタ)やコミティアに客として行くようになったこともあって、自分も絵という表現方法で何か発信してみようと思ったんです」
  • 題材には「フォルムを描くのがいちばん楽しかった」という理由で“女の子”を選んだ。そして、現在のタッチが生まれるきっかけとなった2人の漫画家との出会いを経て、SNSへの投稿からアートギャラリーでの作品の展示、さらには多種多様なコラボレーションへと活動の幅を広げていった。
  • 「大学在学中に、それまでちゃんと読む機会がなかった昔の漫画を読むようになったんです。特に強く影響を受けたのが、手塚治虫さんと吾妻ひでおさん。彼らが描く女の子を見て、体のフォルムとか、顔と目の大きさの比率とかを考えるときに、技術的な上手さや正確さよりも“自分にとって気持ちのいい線やバランス”を意識するようになりました」
  • また、かすかに憂いを帯びた女の子たちの表情に加えて、そのファッションの可愛さも、見る者の目を惹きつける彼女の作品の大きな魅力となっている。
  • 「オーバーサイズのスウェットとミニスカートにルーズソックスを合わせるような、上半身と膝下にボリュームのあるバランスが好きなんです。“大 ・ 小 ・ 大”みたいな(笑)。自分自身もゆったりとしたシルエットの服が好きで、いつもXLサイズとかばかり着ています」
  • 〈MEDICOM TOY〉から発売されたフィギュア/ A figurine made by MEDICOM TOY.
    〈MEDICOM TOY〉から発売されたフィギュア。「自分が描いたキャラクターのめちゃくちゃでかいソフビを作るのが、いくつかある今後の野望のひとつです」
  • 普段愛用している〈NEEDLES〉のH.D.トラックパンツも、知人に連れられて訪れたNEPENTHES TOKYOで手に取って、他にはないワイドシルエットに一目惚れしたそう。今号では、そんなお気に入りのトラックパンツをフィーチャーしたオリジナルのイラスト作品を描き下ろしてもらった(下記に掲載)。
  • 「昔からメンズっぽいファッションが好きだったんですが、ズボンを穿くことはほとんどなかったんです。どんな形のものでも、穿いたときのシルエットがどうしても納得いかなくて……。
    でも〈NEEDLES〉のH.D.トラックパンツは、初めて自分が好きと思えるシルエットになったんですよね。あと、合わせるトップスや靴を選ばないのもいいなって。以前はその日に何を着るか、毎朝なかなか決まらなかったけど、トラックパンツのおかげでそんな悩みも解消されました。今では好みの色が出るたびに買い足すようにしています」
work 01 work 02
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  • 田中かえ:1995年、神奈川県生まれ。イラストレーター。幼少期からイラストを描き始め、多摩美術大学を卒業後、本格的にアーティスト活動を開始。近年は乃木坂46やモモコグミカンパニー(BiSH)、〈Onitsuka Tiger〉〈BEAMS〉など、さまざまなコラボレーションでも話題を集めている。   Twitter:@helloverysunday Instagram:@kaechanha24
Kae Tanaka