インダストリアルデザイナーの, ディーター・ラムス(Dieter Rams) は1995年までの34年間、ブラウン社でデザインディレクターとして500点以上もの商品のデザイン開発に携わりました。そして1959年より創業のVitsoe(ヴィツゥ)のデザイナーでもあります。
9月のロンドンデザインウィークで、Vitsoeのロンドンショップにたくさんのブラウン商品が展示されました。
ただこのブラウン商品達、どこから来たのかというと、なんと、ブラウン社の大ファン、イギリス在住のアメリカ人グラフィックデザイナー、トム・ストロングさんが今まで趣味で集めたという個人のコレクションだったんです。
トムさんは小さい頃からいろんな物を収集することが趣味だったそうで、7歳のときに初めて集めた切手以来、リバティの生地などいろんな物を集めました。そして初めてブラウンのラジオに出会った時から、ブラウン商品に恋をしたそうです。ブラウン社の商品は他社の商品と比べて使いやすさが格別で、尚且つデザインも優れていて、流行りでスタイルだけを変えるのではなく、機能も共に発達していく。この変化の様子を観察するのが大好きだったそうです。ラジオに出会った時はまだ彼がアメリカ軍にいた頃。その後、彼はエール大学でデザインの勉強をしました。この頃から商品だけではなく、パッケージや説明書のデザインにも虜になったトムさん。ラジオから約50年以上、商品の数はなんと250点以上!
トムさん現在77歳。今まで住んでいたロンドン市内のお家から郊外の少し小さめのお家に引越しが決まり、場所的にも年齢的にも全ての商品を管理、保管することが大変になってしまうため、この子達の行き先を探していました。ある日、新しいお家にVisoeの椅子の購入を考えていたので、ニューヨークのショップに行きました。その時に自分のブラウン商品のコレクションの話をニューヨークのスタッフにしたそうです。もともとVitsoe社では、デザインを学びたいという若者達のために何かをしたい、という考えがあったそうで、このコレクションがまさにその答えなのではないか?とトムさんと意気投合。結果、Vitsoeが責任を持って商品の管理、保管、そして展示することを約束。たくさんの学生達に学習の機会を与えるという事を条件に、トムさんは全ての商品を無償で寄付したそうです。なんて、なんて素晴らしいお話なんでしょう。トムさんありがとう。私も勉強になりました。
今現在はもうロンドンのショップには展示されてないのですが、将来的には新しく郊外にオープンしたVisoeのヘッドオフィス兼ギャラリーに展示をする予定だそうです。お楽しみにー。