イギリスで初めて日本の家屋を取り上げたエキシビション「The Japanese house 」がバービカンセンターで始まりました。1945年以降の戦後の日本の住宅事情、建築やデザインの変化がテーマです。
小津安二郎の映画で戦後の日本の家をみせていた。そんな角度から彼の映画を観たことがなかったけど、確かに家の様子が良くわかる。
ヨーロッパは昔の建物がたくさん残っています。内装は変わっているけど、外観は残せるまで残すというのが基本。ロンドンにはいくつか、歩いている人に昔の洋服を着せて、馬でも走らせればあっという間に17世紀にワープできそうな場所がまだあって建物も街灯も昔のまま。日本の建物は戦争で焼けてしまったり、地震で崩れてしまったり、老化で壊されたり、あまり昔のお家が残っていないから残念。でも現在のあのごちゃごちゃした風景が歴史を語っていて、日本をしっかりと象徴していると思う。
戦後、1952年にサンフランシスコで平和条約が結ばれてから、海外の文化が日本にどんどん入ってくるようになり、日本の住宅にもモダンなデザインが求められるようになりました。1955年1月号の『新建築』にて、丹下健三の「近代建築をいかに理解するか」という論考で丹下は「美しきもののみ機能的である」と述べたそうです。これは素朴な機能性のある建築を批判するものでした。そして彼は伝統的な形態をそのまま用いることも否定しました。これをきっかけに翌1956年までに、篠原一男、池辺陽、吉村順三、さらには芸術家の岡本太郎などが同誌で伝統について論じたことを伝統論争といいます。この論争は明確な答えがあって終わったわけではないけど、当時の建築家や芸術家には大きな影響を与えた論争だったと思います。まさに日本が変わろうとしていた証。今は情報を仕入れるのに国境もない時代だからあまりしっくりこないけど、当時の人達にとっては西洋の文化をどの様に取り入れるかは凄く大きな試みだったんじゃないかなと思います。
チェコ出身でアメリカ育ちの建築家、アントニン・レーモンドが戦後日本に帰って来て建てたお家。日本の民家風の造りにベランダをつけるなど、正に伝統的且つモダン。日本家屋と西洋のデザインがしっかり調和しています。レーモンドに影響を受けた日本の建築家はたくさんいるそうです。1900年初期にコンクリートが地震にも強い建築材料として紹介されてから、需要は増えたのですが、さすがに無機質で木などの自然素材に比べると温かみがないことなどを理由にあまり人気がなかったようです。レーモンドはコンクリートは砂、石、土、水というすべて地球上の自然のものからできたもので、使い方によっては建物の強化だけだなく、木材と調和させることで今までにないような建物を建てることができるとその当時の建築家たちにコンクリートの良さを伝えたそうです。
最後に展示会場のど真ん中には西沢立衛の森山低が実物大で再現されていました。おうちの中にも入れて、うちの中は空っぽではなく、雑誌とかレコードとかテレビが置いてあり、なんだか友達のうちにお邪魔した感じで、急に日本が恋しくなった。このお家は2005年に建てられたお家で、敷地内にいくつかのユニットに分かれていて、家主の森山さんと何人かの方がシェアをして住まれているようです。
あーーー日本に帰りたい、と叫びそうになった…。