日本から帰ってきた次の日、2ヶ月前に予約をしていたアレクサンダーマックウィーン展を朝一で行ってきました。彼のテイラーリング、デザイン、素材の組み合わせなどに圧倒され、本当に素晴らしい洋服、靴やヘッドピースなど数々の作品を間近で観て、時差ぼけの脳みそに刺激を与え過ぎたのか、重い頭でそのまま出勤。
仕事を終えて帰りの電車ではぐったりだったけど、京都で出会った唐長、十一代目千田堅吉さんにもらった彼の本を読みはじめたら、なぜかあの朝の刺激が緩和されて、心身ともに癒されました。唐紙の素朴さ、シンプルさの中にある美しさというのはとても日本的なもので、アレクサンダーマックウィーンとは正反対の世界。その日本らしさになんだかホッとしたのかも。
前回のコラムでも少しだけ紹介した唐紙。桂離宮や二条城、御所など数々の襖の紙を手掛けて、400年の歴史をもつ京都唐長。
まず唐紙とは襖に使われる紙。
板木(はんぎ)と呼ばれる、木の板に文様が彫刻されたものの上にふるいという道具で絵の具をおき、上から和紙をあてて手でそっと押さえるというのが唐長の技法です。板木は唐長の宝物、650程の板木があるそうですが、そのうちの300程は江戸時代に彫られたものだそうです。この板木が保管されている部屋をみせて頂いたのですが、まるで博物館のようでした。
唐紙の文様はどこかで見たことがあるという親しみを感じさせるものがたくさんありました。古い物とは思えないくらいにモダンな文様もたくさんありました。これらの文様は使う相手によって好まれるものが違い大きくは公家好み、寺社好み、武家好み、茶方好み、町屋好みと分かれていて公家好みは気品のある雅なもの。寺社好みは空間を生かした大きな文様。武家好みは男性的な豪快さと硬さのある柄。茶方好みは幾何学文様はあまりなく、植物文様。町屋好みは小紋や花鳥風月などの文様だそうです。
これらの板木と絵の具の色と和紙の色の組み合わせで生まれるデザインは無限。決して華やかではないけどその隠された美しさほど美しいものはないと思います。また絵の具には雲母(きら)が入っていてこれがまた上品な光沢感を出します。ほとんどの色は青、赤、黄の三原色からつくるそうで、この三原色からどうやってあの「はんなり」感を出すのか、これもまた職人の技です。
こんな素晴らしい唐紙に出会えた事に感謝、でもそれより千田パパと千田ママに出会えたことが一番嬉しいです。昔はあんなに近くに住んでいたのに、全く知らなかった。でもこうして何十年後かに出会えて本当によかった。また帰国した際には千田ママのコーヒー頂に行きますね~。
Alexander McQueen Savage Beauty
唐長