ドキュメンタリーフォトグラファーである友達のロビンが、去年の年末に写真集を2冊出版しました。それを記念した写真展覧会が来週からTJ Boultingで始まります。その写真集の舞台は、幼少時代に彼自身たくさんの思い出があるイギリスのプリマス。
プリマスはイギリスの西南に位置するデボンシャーにある小さい港町。17世紀にはメイフラワー号がプリマスから出航したことで知られるイギリスの港で、イギリス海軍の重要な軍港としても有名な町。しかし、一時はイギリスのリゾート地として活気に満ちていたものの、今では学生と海軍とお年寄りだけの少しさびれた雰囲気が漂うだけの町になってしまいました。
ロビンはそんなプリマスへと何十年ぶりに戻り、2年という月日をこの一冊の写真集のために費やしました。小さい頃の思い出とは全く別の姿になった町に住みながら、何度も自分に、'What am I doing here?' 「いったいここで俺は何をしているのだろう」と問いかけたそうです。そしてその疑問が次第に、‘What am I, here?’「ここにいる自分とは何なんだろう」に変化していきます。
そんな疑問を抱えながら、ナイトクラブやパブで楽しむ若者達のポートレートや、活気の無い海辺や周辺のレストランで時間を過ごすお年寄り、朝もやの中を走りぬける犬など、数多くの写真をプリマスで撮り続けました。その作品を見ていると、活気なく寂しいはずのプリマスが、ロビンの手によって審美的で好奇心を沸かせるような町に生まれ変わったように見えます。そして、彼の探していた答えは、この写真集にギッシリつまっているような気がします。
ロビンはロンドンとカリフォルニアを行き来しながら生活をしているのですが、ロンドンにいる時は家に泊まり、でも何日かすると急にいなくなり、そしてまたある時に突然現れるという、私からすればとっても楽観的な人生。でも、そんな彼が2年前にいきなり「プリマスに住みに行く」と断言しました。
ロンドンという、活気があってコスモポリタンで常に動いている街から、なんでわざわざ何も無いプリマスに行こうと決めたのか、当初まったく意味がわかりませんでした。常に変化しているロンドンのほうが、いっぱい面白い写真が撮れるんじゃないか?と思ったけれど、この写真集を観て、どうして彼がプリマスを選んだのかが分かりました。そして、プリマスだったからこそ撮れた写真たちが、こうして一冊の本になったという事はすごい事だと思います。
同じドキュメンタリーフォトグラファーとして、イギリスはもちろん世界中で知られる写真家と言えばMartin Parr。私も大好きで、もちろんロビンも尊敬しているフォトグラファー。とても嬉しいことに、そのMartin ParrとGerry Badgerによる"Photoeye’s ベスト・ブック・オフ・ザ・イヤー"に、なんとこのロビンの写真集が選ばれたのです。
Martin Parrからロビンへのコメントには、「彼の人生の一片と視野はとても個性的で超現実的で、何でも無い物を意味深い物に変化させることができる能力を持っている。」とありました。私もその通りだと思います。これからも良い写真をたくさん撮り続けて欲しいです。ロビン頑張ってね!ということで、近いうちにロンドンに来る機会がある方は、是非展覧会にお立ち寄りください。6月2日までオープンしています。
GOD FORGOTTEN FACE - ROBIN MADDOCK
TJ Boulting
3rd May – 2nd June
(Private View Wednesday 2nd May, 7-9pm)