コーヒーがとても好きで1日に何杯も飲む。
酸味が少なくて苦くって、ずっしりくるやつが好きだ。
父も母もとにかくコーヒーを飲んでいた。
2人してタバコをくゆらせながら。
豆をひく大きな音から一変、徐々に部屋の中が
コーヒーの匂いで包まれる。
朝のそれが一番好きで、ご飯の匂いや部屋に入ってくる光や
床の冷たさや窓の外や、テーブルに並んだ学校に持っていくお弁当や。
朝の景色だ。
数年前に倒れ
命が亡くなるか命だけが残るかを彷徨った母は
医者も理解不能な回復力で
ぼくたち家族の日常に戻って来てくれた。
正月に鹿児島へ帰ったとき
朝、母がコーヒーをいれてくれた。
家に広がるコーヒーの匂い。
父は相変わらずタバコをくゆらせて。
久しぶりに見た自分ちの景色
鼻の奥がつんとなったと思うんだけど
それはコーヒーの酸味じゃないね
うちのコーヒーは酸味少なめだから
神様はいる
神様ありがとう、ってまた思ったのだ。