何年ぶりだろう。
名前は登録してあったけど掛かってきた時
誰だったかちょっと思い出せなかったぐらい久しぶりの知人から電話が鳴った。
少し話しをして、一緒に仕事をすることになった。
いつかの出会いは、ふとしたタイミングで、どんなことに繋がるのか分からない。
一緒にやることになったプロジェクトのオリエンの帰り
ずっと気になっていた「テマヒマ展<東北の食と住>」へ行くことができた。
長く厳しい東北の冬。
圧倒的な自然と向き合いながら生み出された東北のものづくり。
繰り返し繰り返し、黙々と、根気よく行われる作業。
そのすべては人の「手」から紡がれる。
めぐる季節、暦と共に歩み、謙虚に暮らす。
会場は映像による展示、そしてショーケースによる展示構成になっている。
暗闇に浮かぶ大きなスクリーンに投影されるTom Vincent氏によるドキュメンタリー。
そこに描かれる農家の人たちや伝統的を守る職人、工房の人々。。
ものづくりの現場、ありのままを撮ったもの。
説明的な文字も、余計なナレーションも一切なし。
淡々と、淡々と。
まるで東北の人たちのものづくりの現場にお邪魔しているような。
眺めているうちに、なんだろう、急に涙があふれて止まらなくなってしまった。
謙虚で、辛抱強くて、あたたかくて、優しい。
少し照れて笑う顔、手、その所作、目。
深く美しく刻まれた皺に引き込まれて、人が生きている様に心揺さぶられた。
涙をふいて席を立ち、隣の展示へ。
そこには松の枠で作られたガラス張りのショーケースが並ぶ。
6県55種の品々。
大根や麩、お皿やザル、椀、鉄器、駄菓子までもが丁寧に並べられている。
ぼんやりと床に影が落ち、美しくそこに存在している。
配布されたペーパーには、55品それぞれの背景、成り立ちが書いてある。
それを読みながらじっくりと展示物を眺めていると、なんだかまた涙が溢れてきた。
精神を壊した友達は鹿児島へ居を移した。
「あどちゃんの故郷は、時間がゆっくりしていて、いいね」と彼は電話で話していた。
東京の1日は早い。
落ち込んだり、考え事をしていたり、ぼんやりしていたら
すぐに1日は終わってしまう。季節さえも移ろってしまう。
手間と暇をかけて生み出される東北のものづくりには
しっかりと「時間」という概念が流れてる。
テマヒマ展が訴えていた、合理性を追求することで忘れられがちな
「時間」について考え直すきっかけはもちろん。
自分は、ひたむきに粘り強く生き、成し遂げる東北の人たちに
そして愛しくて大切な時間をちゃんと使う、という東北の人たちに
ものすごく感動したんだと思う。
もうすぐ夏がくるなあ。