SUNABAというバンドをしておりますがコラムタイトルは1stフルアルバムのタイトルでもあります。
約3年前にリリースした作品ですが、最近になってやたらとこの "シンプル" という言葉が気になるようになってきました。 なぜアルバムタイトルをこれにしたかと言うと自分をえぐり出すようにして振り絞って書いた言葉たちが結果、とてもとてもシンプルなことだったから。大切な人を想い、仲間を愛し自らが進む道を信じて、夢を見失わず、日々を生きていく。大切なことは案外、日常に散らばっていて、でも日々忙しく過ごしていると見逃したり見落としてしまいそうになります。少し心を留めて、気づいていきたい。そんな想いがこのアルバムには込められています。
宣伝のようになってしまいましたがそういうわけでなく、いや、もちろん聴いて欲しいんですが(笑)今書きたいことは、3年たって“シンプル”って言葉が身にしみる、って話。
震災から4ヶ月が経ちました。
東京にずっといますが、電車の本数が減ったり、お店に「節電」の張り紙がしてあったり、コンビニがちょっと暗くなって落ち着く、とかそれ以外はいつもの生活を送ることができているように思います。でも、なにかこう、テンションというか、ムードというか、張りのようなものが1つ、大きく下がっているように感じます。震災前の状態にはもう二度と戻れないなあと痛感しているし、今となっては震災前の状態を思い出すことも難しい。そんなこんなもありつつ自分自身にも変化がありました。
1つ目。
これまでほとんど目に入ってこなかった植物に、とても興味がわくようになったこと。先月パリに行っていたのですが、街にはほんとに緑が多く、お休みの日はそこらじゅうに市場が出て、食料、ワインはもちろんいろんな植物を見かけます。何棟もハウスをオープンさせて植物専門の市場もあったりします。目を細めて口もとは半開きでだらしないロン毛。「いいわぁいいわぁ」なんつって植物たちを眺めながら市場を巡りました。かつて一度だけサボテンを部屋に置いたことがありましたが、風化してカスカスになっていなくなってしまうほど植物を育てることに無頓着だった自分がなぜこんなにも心惹かれているのか。年を取ると、これまで苦手だったモノがいきなり食べられるようになったりするアレなのかしら。
2つ目。「断捨離」という言葉に出会いまして。知ってはいましたが、全貌を知ったのが最近。いろんなところでこの単語を見かけていたので気になって本を買ってみました。だいぶブームだったようで、関連書籍がモリモリ。選ぶのがちょっと大変なほどでした。
僕はモノがほんとに多くて、かつ捨てられません。大半を占めるのは本、CD&DVD、そして洋服&靴。洋服に関してはほんとに酷く、前住んでいた家には到底収まらなくなり今の家は、1部屋をまるまる床から天井まで全方位が埋まっている洋服と靴だけの部屋にしているほどです。スタイリストの友人が、たまにリースしに来るほどです(笑)。
でも、体はひとつ。断捨離の本を読んで、改めて考えてみました。昨今、自分が何を好んで、どんなもをを選んでいるか。
夏。Tシャツは白かグレー。半ズボン。ビーチサンダル。
冬。チェックシャツ、デニム、軍パン、ブーツ。
これってここ何年も変わらない選び…。
何段にも色別に詰め込んであるTシャツ。白とグレー以外は必要ない、と。
壁一面を覆っているスニーカーたちは、ほとんど履く機会はナシ。1シーズン以上着ていないアウターなどがそのまた逆の壁を占拠。
仕事が終わって家に戻り、衣装部屋にこもり断捨離を始めました。思い出や自分的レア、みたいな感じを全て取り去って!着る、着ないのみで判断!それでもうーん、ってなりながら、まずはTEEの断捨離。軽く80枚超えました…。
それでも衣装部屋の感じはすっきりもしないし片付いた感も皆無。
長い戦いになりそうです(笑)。
震災前には戻れません。でも震災で受けたショックが、今こうして自分に変化をもたらしているのだと思います。本当に必要なもの、本当に大切にしたいもの。いらないものや不要なことが多すぎて自分の「本当」が見えなくなってしまうその前に。しっかりと見極める努力をしていきたい、と。そう思えるようになったのかなと思います。こうして世の中を見渡しても、これだけの断捨離の本が出版され、いろんなお店で緑を見るようになって。それだけ世の中のムードが “ほんとに必要なもの” を探す方へ向いているのだと思います。
大事なものを見落とさないように。
大切な人をもっと大切に。
大事な瞬間を見逃さないように。
シンプルに考え
シンプルに動く。
シンプルな人間になれるように。
毎日暑いです。
亜童 A.D.O
フリーランスの編集者、ライター、ディレクターとして雑誌やWEB、広告、映像のディレクションをつとめる。雑誌『THE DAY』(三栄書房刊)のクリエイティブディレクターとしても活動中。人生一度きり、の思いを掲げ、自らのお尻を叩きながら前へ前へ。
鹿児島出身、目黒区在住。
http://thedaymag.jp/