直前まで雨予報だった空模様は、開催時刻になってみると見事な快晴が広がった。
全感覚祭として本会場での開催は3度目。海沿いは前回開催時より舗装された為、ステージ間の移動や見晴らしが大きく変化し、
天候も相まって終始穏やかな空気が流れていた。昨年この場所で感じた事は、しっかり肌に残っている。
今回、本イベントに出店者として参加する私は、話をもらって以降、自身の運営するヴィンテージショップの買付時、彼らの印象から赤い服を粛々と溜め込んでいた。その1着1着を詰め込んだ大きなカバンを背負って、大阪会場に向かう。
AM 10:00、会場は設営のピークだったが、チーム十三月やボランティアスタッフの方々からは、緊張感というよりも眩しい希望が優しく溢れている様に赫々たるものを感じた。
私の出店場所はフードフリーの配布テント目の前。
今回の開催にあたり、このフードフリーという新たな挑戦の話を聞いた時は驚いた。言葉の通り、投げ銭で資金を集めている本イベントで、フードがフリーで配布される訳である。正気なのか、と思ってしまった最初の印象は、ステイトメントやタイムラインを目にする中で現実になっていくのを確かに受け止める。そこには、彼らの表明に対し手を挙げる方々の想いが、強く飛び交っていた。
頂いたカレーライスを口にした時、普段お金を払って食べている食事でも忘れかけてしまう”ありがたみ”を強く噛み締めた。
フードフリーの食事に、口に入れる迄の今までにない感情を覚えた。
AM 10:50のNUUAMMの演奏が始まり、ODD RED / WHITE RIOT / BLUE HEAVEN 3ステージそれぞれから音が鳴り響く。
ハードコアやヒップホップ、其処は限りなく垣根の無い音楽という存在が自由に蠢き合う。
舗装された海沿いは、老若男女・子連れの夫婦まで各々の時間を楽しむ選択で溢れる。色々な音楽フェスを肌で感じてきたつもりではあったが、今までで一番柔らかで肌触りの良い場所であった事は事実だ。
様々な存在が日々重ねてきた瞬間が、更に膨張する時間。
出店を切り上げ、止まらない人の波の中迎える大トリのGEZANのライヴは、現状や新しい未来・タイムラインを越えたところにパスされる可能性に満ち溢れたステージ。
言葉が強いのに、言葉に出来ない感情にさせてくれる存在って、本当に稀有である。
まだあやふやな言葉を胸に締まって、帰路に向かった。
10/12(土)に予定していた千葉での開催は、台風19号関東地方直撃の影響により、開催中止がアナウンスされた。
イベント開催中止の発表に感情の置き場が難しかったが、この先の動向に希望が光る。チーム十三月の動きは止まらない。
短期間の中で、渋谷のライヴハウス7会場でのオールナイト開催が決定した。
正直、彼らの熱意は勿論、新しい”何か”に希望を持った人間が集まったという強烈な瞬発力であっという間に開催時刻となった。
21:00 真っ赤に染めたハンガーラックと商品を引きずり、道玄坂を駆け上る。
私の出店はO-Eastで、開催場所の位置情報を考えると最も中間地点かつ大きなキャパである。
23:00をまわり、外に溢れていた人の列が続々と会場内に吸い込まれていく。
1つの会場にいても確かに感じる沢山の心と足、溢れる人々。
気がつけば、開場時間からあっという間にどこも入場規制状態となってしまった。
街や通りの飲み屋に溢れる人々。祭は会場外にまで広がっていた。
この一つの”混乱”も、もしかしたら想像できたことだったかなと思うと、入れず連絡を寄こす方からの連絡には全て対応出来ずいた。
告知期間、僅か3日間だったろうか。全て想像は軽快に跳び越えたし、
GEZANのマヒトゥー・ザ・ピーポーがMCで語る様な想像力は、各々の中で想像出来ない事も含め足を動かしたのかもしれない。
出店を終え、急いで向かった渋谷WWWX4:30 、GEZANの最後の出番・本日3度目のステージ。
優しく強い音楽、友達との曲BODY ODD。
最後まで彼らは其処に存在して、ずっと遠くまで想像していた。
終演後、大阪同様にかきこんだカレーの味は二度と忘れない。余韻が響き渡る中、清く乱れた感情を一つ一つ優しく触れる様に、
また私は日常の中での出会いを噛み締め生きていくだろう。
全感覚祭を音楽フェスという言葉のみでは形容しきれないが、途切れない花火の様な美しさも優しさもこの夜に強く感じた。