〈ENGINEERED GARMENTS〉と〈NEEDLES〉。
東京とNY、遠く離れた地で同時に生まれた
2つのコレクションは、その創造の源泉がシンクロしていた。
新シーズンを読み解くキーワードはブラック。

Interview & Text : Hideki Goya

〈ENGINEERED GARMENTS〉の2015年秋冬コレクションのテーマは「My Own Private 80’s」。多彩なデザイナーたちがNYのファッションシーンで輝きを放ち、日本ではDCブランドブームが巻き起こっていた1980年代は、デザイナー、鈴木大器がファッションに最も影響を受けた時代だという。「TRAVEL & SAFARI」をキーワードに掲げ、トラベルウエアやミリタリーウエアにエスニックなテイストをミックスした昨シーズンと同じ、80年代のファッションに着想を得ながらも、今シーズンはまったく異なるアウトプットを披露。それは、よりパーソナルな記憶を紐解いた結果。ネイビーやグレーといった〈ENGINEERED GARMENTS〉らしい色に加えて、フォーカスされたのはブラックだ。

「スタッフたちとの何気ない会話がきっかけで、ダークトーンのコレクションを作ってみようと思いついて。まずは、すべてのアイテムをブラックでデザインしてみました。黒のアイテムはこれまでにも作ってきましたが、ここまで意識的に使ったのは今回が初めてですね」

新型はもちろん、おなじみの定番アイテムも黒が展開される今季のコレクションは、クールで都会的。洗練された雰囲気が漂っている。「黒という色のイメージは?」鈴木に問う。返ってきたのは「自分にとって黒は80年代を象徴する色」という言葉だった。

「80年代は、東京はもちろん、海外にも黒い洋服が溢れていたし、自分も黒い服ばかり着ていました。あと、黒とネイビーのミックスに出会ったのもこの頃。それまで、トラッドのルールではネイビーとグレーの組み合せは揺るぎない定番だったのだけど、ネイビーと黒のコーディネイトはNGだった。それを覆したのが〈コム デ ギャルソン〉。自分にとって衝撃的な出来事で、それからしばらくはブラック、ネイビー、グレーのミックスにハマっていましたね」

その色彩感覚は最新のルックヴィジュアルのスタイリングで存分に表現されている。キーカラーはもちろんブラックなのだが、ブラックのみのコーディネイトはほとんど見あたらない。これが鈴木大器の「My Own Private 80’s」。

「ブラックだけでスタイリングするよりも、ネイビーやグレーを合わせることで奥行き感が出るんです。ちょっとしたハズしにもなって、それが面白いかなと。実際には、ブラックのみでコーディネイトしても楽しめるように、色の濃淡やテクスチャにはかなり気を配りました。定番素材のウールサージやリップストップに加えて、ざっくりと編まれたニットやコーデュロイ、そしてレザーやファーなど、マテリアルのバリエーションは豊富です。ワントーンコーディネイトでも、テクスチャで遊んだ表情のある着こなしを楽しんでもらえたら嬉しいですね。

鈴木大器がスタイリングを手掛けた〈ENGINEERED GARMENTS〉2015年秋冬コレクションのルックヴィジュアル。上質な素材の豊かな表情、細かなディテールを表現するため、モノクローム写真で発表された。"同色でまとめてもテクスチャの重ね方、レイヤードするアイテムのレングスの長短などで変化をつければ、ここまで奥行きのあるスタイリングが可能。「ネペンテス」のwebサイトではカラーバージョンも公開されている。

「素材感だったり、ひとつのアイテムだったり、またはディテールだったり。例えば、リネンをメインにとか、オリエンタルな雰囲気でとか、ノーカラーのアイテムを中心に考えようとか。デザインを発想するための要素は毎シーズン、その時々の気分で違うんだけど、今回は色。黒とインディゴ、またはそのコンビネーションというのが出発点になりました」

デザイナーの清水慶三がそう語る〈NEEDLES〉の2015年秋冬コレクションは、やはりブラックのアイテムが豊富だ。ダブルブレステッドのチェスターフィールドコートやレオパード柄のコーチジャケット、ペイズリー柄のコーデュロイで仕立てたテーラードジャケットとセットアップパンツ、さらには定番のトラックトップ&パンツ、そしてスニーカーやコードバンのエンジニアブーツなど。無彩色でありながら華々しさを感じさせる強烈なクセを潜ませた新作からおなじみのロングセラーまで、ブラックがずらりと揃う。

「〈NEEDLES〉にとって黒は、ずっと作り続けているメインカラーのひとつなんです。ただ、ここ数シーズンは強く打ち出していなかったですね。その反動という意識はないのですが、久しぶりに自分のベーシックな部分が表に出てきたのかもしれません」

「パープルと並ぶ、パーソナルカラー」。清水は黒についてそう話す。過去のワードローブであるポケTやペインターパンツは、ブラックばかりを愛用していたそうだ。もっとも身近な色のひとつ、黒を清水はどんなイメージで捉えているのだろうか。

「黒は一番強い色。赤や黄色といった原色よりも印象的。けっして無難な色ではないですね。身につける人の個性も問われる色だと思います。かつては自分のルーツであるアメカジやミリタリー、アウトドアに、黒は存在しませんでした。それで『REDWOOD』(清水の発案で00年にオープンしたセレクトショップ)のバイイングをしている時は、アウトドアショーに出向いては、黒いアイテムの別注をしてましたね。だから黒にアヴァンギャルドさも感じます」

一方、メインのコレクションとは一線を画したコンセプトのもとで制作される〈REBUILDBY NEEDLES〉は、その世界観とコレクションをさらに拡充。清水の斬新なアイデアと高度な技術による無類のオリジナリティはさらに鋭さを増している。

「今シーズンはファティーグシャツやプリントネルシャツを使ったものに加えて、〈LEVI’S〉501やブラウンダックの〈Carhartt〉などの古着を再構築したアイテムを作りました。意識的にセットアップで提案しているのも新しい試みです。最近は、次のリリースに向けて、〈Dickies〉のパンツや〈GILDAN〉といった既製品をリビルルドしたアイテム制作に取り組んでいます。定番アイテムの新しい表情をどこまで引き出せるか、楽しい試行錯誤を続けています」

映画『セルピコ』で汚職と戦う警官を演じたアル・パチーノを彷彿とさせる、ひげをたくわえた男をモデルに起用した〈NEEDLES〉2015年秋冬コレクションのルックヴィジュアル。インナーにデニム、その上にウールのコートやカーディガンを羽織り、足下にはエンジニアブーツ。これが清水の記憶に残るアメカジをアップデイトしたスタイルだ。インディゴ染めによるダークネイビーとブラックの組み合わせ、オールブラックのルックも多数。〈NEEDLES〉と黒の久しい蜜月が見てとれる。